メッセージ:2014年1月〜3月  

タイトル枠上
タイトル枠左

ホームページをご覧の皆様へ
関西フィルハーモニー管弦楽団第254回定期演奏会(2014/3/30)によせて
−飯守泰次郎−

タイトル枠右

タイトル枠下
 


飯守泰次郎です。3/30は、関西フィルの第254回定期演奏会です。2011年から十年がかりで進めている、ブルックナー・ツィクルスの第4回として、交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を演奏します。プログラムの前半はシューマンのピアノ協奏曲イ短調で、ソリストに弓張美季さんをお迎えできるのも楽しみです。

関西フィルとは、このたびのツィクルスで取り組む以前から、たびたびブルックナーの交響曲を演奏してきました。また、同じ後期ロマン派の中でも特に、響きや楽器法の点においてブルックナーの音楽と非常に共通する要素のある、ワーグナーの楽劇にも、継続して取り組んできており、今年も6月に「ジークフリート」第3幕(演奏会形式)を取り上げます。
そのような土台があるので、今回のリハーサルも素晴らしい段階に近づいてきています。

しかし、ブルックナーの交響曲はやはり大曲だけに、極めて集中したリハーサルを長時間にわたって積み重ねていくことの難しさもあります。
常に、全曲を見通したエネルギーの配分を考慮することが必要です。そして最も大切なことは、ブルックナー特有の響きおよびハーモニー感と、巨大編成のオーケストラの中で遠い位置にあるパート同士であっても有機的にアンサンブルをすることです。

オーケストラの大曲であればどんな作品でも、音楽の大きな流れというものが大変重要であり、たとえばワーグナーの楽劇などもその一例です。しかしそれらの大曲の中でも、ブルックナーの交響曲は、彼らしい不器用さ、単純さがあるだけに、小細工は通用しません。ブルックナー・オーケストラと呼ばれるようなヨーロッパのオーケストラは、音楽の大きな流れを皆が感じながら、奏者が自発的に響きを作っていきます。
明日は、そのような大きな流れを、オーケストラと聴衆の皆様とで共有できるよう、力を尽くしたいと思います。ザ・シンフォニーホールで、皆様のお越しをお待ちしております。

 
飯守泰次郎

 

タイトル枠上
タイトル枠左

ホームページをご覧の皆様へ
神奈川フィルハーモニー管弦楽団第296回定期演奏会(2014/2/22)によせて
−飯守泰次郎−

タイトル枠右

タイトル枠下
 


飯守泰次郎です。明日2/22の神奈川フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に向けて、毎日リハーサル中です。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」から“前奏曲と愛の死”、そしてブルックナーの交響曲第7番という、後期ロマン派のプログラムです。

よく知られているとおり、ブルックナーはワーグナーに心酔していましたので、響きにおいて非常に共通性があります。ブルックナーの交響曲には宗教性と官能性が共存しており、その官能性の側面がまさに「トリスタンとイゾルデ」の世界観に通じています。

たとえば「トリスタンとイゾルデ」の指導動機(ライトモティーフ)のひとつに「死の動機」というのがあります。半音上がってから低音に下行する、その下がった低音を楽譜どおりただ漫然と弾いているだけでは、聴衆はそれを指導動機として立体的に認知することはできません。作曲家は、ただ音を書き並べているわけではなく、半音の上行、そして低音のそれぞれに意味があります。その意味合いを理解したうえで、その意味を伴った音がまず自分の中で鳴り響いていて、それが内面から湧いてきて演奏したときに初めて、聴衆に「死の動機」のイメージが伝わるのです。

ブルックナーの交響曲は、非常に宗教的で、まるでオラトリオのような部分さえあります。そうでありながらもやはり、執拗に繰り返される主題は、いわばワーグナーの指導動機と同じように、そのたびに立体的に認知されるように演奏される必要があります。そこに書かれている音楽に、作曲者自身も知らなかったと思われるほどの宗教的真理が込められているのです。

作曲家の創造の原点に立ち返って考えるならば、作曲家は楽譜を書くこと「しか」できなかった、ともいえます。本当は、楽譜に書く前に、作曲家の心の中に音楽が響いていたはずです。
私たち演奏家は、ただ楽譜を知的に読んで「再現」すればよいのではなく、その作曲家の心の中の響きを求めて、そこに到達しなければなりません。それは「再現」ではなく「再創造」なのです。
文学でいえば「行間を読む」ということがいわれるように、私たちは楽譜の背景にあるもの、音符の後ろにあるものを読み取り、時には楽譜から「はみ出て」でも演奏しなければならないのです。

後期ロマン派の転調につぐ転調も、「いまこの調性」そして「今度はこの調性」ということを全員があらかじめわかっていて、そのハーモニーの気配を先取りして感じ取り、その響きを求めたときに初めて、オーケストラ全体が本当にその調性の響きで底鳴りするのです。
特に、交響曲第7番のホ長調は、まさに「愛の至福」の調性です。全員が心の中から皮膚の毛穴までホ長調を持っていなければ、オーケストラはホ長調で真に響くことができません。

神奈川フィルはとても素晴らしいオーケストラで、皆さんが全身で全力で演奏する、という姿勢がいつも徹底しています。リハーサルの最初から大変良い音がしていて、私のさまざまなお願いにも柔軟に応じてくださるので、感謝しています。ここまでくれば、一緒にもっともっと先まで行けるのではないか、という気がしています。

みなとみらいホールでの本番が、大変楽しみです。

 
飯守泰次郎

 

タイトル枠上
タイトル枠左

ホームページをご覧の皆様へ
新国立劇場2014/2015ラインアップ発表(2014/1/17)によせて
−飯守泰次郎−

タイトル枠右

タイトル枠下
 


飯守泰次郎です。本日1/17、新国立劇場で、2014/2015の公演ラインアップ説明会(オペラ・バレエ・演劇の三部門合同/報道関係者等対象)が開催され、私は次期オペラ芸術監督としてご説明をいたしました。 詳しい内容は新国立劇場ホームページに本日発表された通りです。

計10演目のうち、私はワーグナーの「パルジファル」(2014年10月/計5回公演/新制作)「さまよえるオランダ人」(2015年1月/計5回公演)を指揮いたします。

きたる1/22(水)には、どなたでもお聞きいただける同様のラインアップ説明会でもお話しいたしますので、ぜひ皆様のお越しをお待ちしております。

今回のラインアップ発表にあたり、本日配布されたご案内のパンフレットに掲載した私のご挨拶を、ホームページをご覧の皆様にもお届けしたいと思います。

***

オペラを愛する皆様、新国立劇場の次期オペラ部門芸術監督として、心からご挨拶申し上げます。このたび私に与えられた使命の重さを痛感し、皆様のご期待に応えるべく、持てる力のすべてを投入する決意でおります。

西洋文化とオペラは切っても切れない関係にあります。オペラの世界には、歴史、民族、宗教、哲学、政治、そして人間のありのままの生きざまなどが生き生きと描かれており、その普遍的な内容の深さに私はいつも圧倒されます。

ヨーロッパおよび日本での私の経験をもとに、オペラが人間に与える豊かさを日本の文化の中で活かしていくことこそ、私の務めであり喜びです。新国立劇場の16年にわたる豊かな実績と国際的な名声をふまえ、世界の主要歌劇場のひとつとして、よりクオリティーの高い公演を実現していきたいと思っております。

2014/2015シーズンは、新制作のワーグナー「パルジファル」で幕開けとなります。これにより新国立劇場は、ワーグナーの主要作品すべてを上演したことになります。演出はドイツの巨匠ハリー・クプファー、そしてクリスティアン・フランツ、ジョン・トムリンソン、エヴェリン・ヘルリツィウスなど豪華なワーグナー歌手が勢揃いします。

続いて、プッチーニ「マノン・レスコー」。2011年の初日直前に東日本大震災により中止となった作品ですが、今シーズンの新制作2本目としてついにお届けできることになりました。

そして新制作3本目はヴェルディ「椿姫」です。常にレパートリーにあるべきこの名作を、フランスの新鋭ヴァンサン・ブサールによる感覚的で美しい演出、フレッシュな指揮者と歌手陣でお贈りします。

次に、ワーグナー「さまよえるオランダ人」を上演します。彼自身のアイデンティティーを初めて打ち出した作品です。
ヴェルディの作品からは、「ドン・カルロ」と「運命の力」。そしてJ・シュトラウスII世「こうもり」とリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」。ともにウィーンの香り高い作品です。シーズンの最後を飾るのは松村禎三の「沈黙」です。この作品は日本が世界に誇る傑作の一つであると私は確信しております。

2014/2015シーズンのラインアップを、皆様に楽しんでいただけましたら大変嬉しく思います。

 
新国立劇場次期オペラ芸術監督 飯守泰次郎

 

タイトル枠上
タイトル枠左

2014サンシティ・ニューイヤーコンサート(2014/1/4)によせて
−飯守泰次郎−

タイトル枠右

タイトル枠下
 


飯守泰次郎です。明日1/4は、埼玉県越谷市のサンシティホールで、ニューイヤーコンサートです。オーケストラは、昨年末から共演の機会が続いている東京フィルハーモニー交響楽団です。

プログラムは、ヨハン・シュトラウスII世のワルツ『春の声』に始まり、新年にふさわしい華やかな曲を集めております。
ソプラノの森麻季さん、テノールの中鉢聡さんという、人気と実力を見事に兼ね備えたお二人をお迎えして、オペレッタとオペラの名アリアを歌っていただきます。

お正月の午後、音楽で新年を祝い、より良い1年を皆様とご一緒にスタートできればと思います。ぜひ、皆様のお越しをお待ちしております。

 
飯守泰次郎

 

タイトル枠上
タイトル枠左

ホームページをご覧の皆様へ
2014年を迎えて新年のご挨拶
−飯守泰次郎−

タイトル枠右

タイトル枠下
 


ホームページをご覧くださっている皆様、明けましておめでとうございます。
2014年は午年 でも我が家はいつもネコ年?…愛猫トロちゃんと
2014年は午年 でも我が家はいつもネコ年?…
愛猫トロちゃんと

昨年も応援してくださって、ありがとうございました。皆様に心からお礼を申し上げます。

年越しをはさんで東急ジルベスターコンサートに出演しておりました。
テレビ東京系列で生中継された「カウントダウン」では、インターネットの投票で選ばれたワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲を指揮して、幸いにも無事成功させることができました。
これもすべては、オーケストラおよび各方面の関係者、スタッフの皆様、そして聴衆およびテレビの前で応援してくださった皆様のお力に支えられてのことで、本当に感謝しております。

今年が皆様にとって良い年でありますよう、お祈り申し上げます。
そして、皆様とコンサートホールでお目にかかれることを楽しみにしています。

ジルベスターコンサート終演後のパーティーで ピアニストの小山実稚恵さんと ジルベスターコンサート終演後のパーティーで
ピアニストの小山実稚恵さんと
 
飯守泰次郎

 
 
− 当サイト掲載情報の無断転載を禁じます −
(c) Taijiro Iimori All Rights Reserved.