メッセージ:2018年1月〜  

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新国立劇場『フィデリオ』
演出家カタリーナ・ワーグナー記者懇談会(2018/5/16)

−飯守泰次郎−

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『フィデリオ』演出家カタリーナ・ワーグナー氏
『フィデリオ』演出家カタリーナ・ワーグナー氏

飯守泰次郎です。新国立劇場開場20周年記念特別公演『フィデリオ』のリハーサルが大詰めを迎えております。

5/20(日)の初日を前に、報道関係者の方々を対象にした「演出家カタリーナ・ワーグナー記者懇談会」(通訳:蔵原順子氏)が5/16に開催されました。私はこの懇談会には同席しませんでしたが、連日の稽古の合間を縫ってカタリーナ氏と、ドラマツルグを務めるダニエル・ウェーバー氏を囲んで多くの記者の方々がお集まりくださり、短い時間ではありましたが活発な質疑がかわされましたので、その一部の要旨を以下にお伝えしたいと思います。

カタリーナ氏らしい非常に斬新な問題提起を含んだ舞台なので、驚かれる方も多いと思いますが、どうかご自身の感覚で自由に、まさに今から生まれる新たな『フィデリオ』の姿をご覧いただきたいと思います。オペラパレスで皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(飯守泰次郎)

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新国立劇場「カタリーナ・ワーグナー記者懇談会」(5/16)より、質疑応答の一部(要旨)ご紹介〜

Q:ワーグナー以外の作曲家の作品にも親和性を感じるか。ベートーヴェンの音楽のどういうところに最もインスパイアされるか?

A:基本的に演出家として、その音楽に何かしら感じるものがある作品を演出するべきだと考えている。ただワーグナーの音楽は私にとっては特殊で、子供のときからあまりにも当たり前な存在でうまく言葉で説明できない。私の人生の一部であり、特になじみ深い。 他の作曲家の作品も音楽的内容に惹かれるものを演出している。そういう意味でベートーヴェンの音楽にも惹かれる。

Q.『フィデリオ』の音楽の特にどういうところに惹かれるか?

A:特に合唱の場面に心打たれるが、それが今回さらに親近感が増しているのは、新国立劇場の合唱団が大変素晴らしいから!ますます合唱の場面が好きになった。もちろんレオノーレのアリアもフロレスタンのアリアもそれぞれ素晴らしい。
カタリーナ氏とドラマツルクのダニエル・ウェーバー氏
カタリーナ氏とドラマツルクのダニエル・ウェーバー氏
Q:演出をするにあたり、特に譲れない、あるいは大切にしたいと考えていることは?

A:個人的に情熱を感じる作品を演出することだ。1つのコンセプトだけでは作品は埋めつくせない。作品全体を満たすだけのアイディアを持てる作品を演出し、常に、お客様の想像と思 考を引き出せるように考えている。バイロイト音楽祭に招く演出家についても同じ考え方で、作品に対して炎のような情熱を持っている人を招いている。
そして、劇場の姿勢も重要。「このプロダクションを世に送り出したい」という強い気持ちを劇場が持つことが大切。新国立劇場はすべてのスタッフが優れていてフレンドリーで、最高の環境で仕事ができている。このプロダクションを新国立劇場でできるのは私にとって大きな喜び。あまりにも新国立劇場が完璧なので、「腹を立てる」という感情を忘れてしまったほどだ(笑)。

Q:この作品に多くあると思われる「余白」をどう埋めるか、あるいは埋めずに観客の想像の余地を残すか?

A:我々はぜひ、皆様に考えてほしいと思って演出しており、その意味で「余白」は残している。考えていただくために「こういう方向の考えもある」という示唆となることも、多く盛り込んでいる。ベートーヴェンの音楽は、決して何かを断言しているわけではない、と思っている。 我々の見解も押し付けるのではなく、「?」付きで提示したい。特に結末については、ご覧になる方々に考えていただく、オープンな結末にしている。

Q.今回、新国立劇場で演出する作品が『フィデリオ』ということはずっと前から決まっていたか?

A:2年前に飯守芸術監督からオファーをいただいた。私も以前から考えていた作品なので、オファーをいただいて短い時間で引き受ける判断ができた。 飯守マエストロとの仕事をとても楽しんでいる。マエストロは立ち稽古のかなり初めの段階からほぼすべてのリハーサルに付き合ってくださって、これは決して普通のことではない。演出稽古の段階から一緒に作りあげてきた、という手ごたえがある。

Q:飯守芸術監督はインタビュー(「ジ・アトレ誌2018年1月号掲載)で「長い間閉じ込められても変わらないフロレスタンの高潔な人物像をカタリーナさんがどう描くが楽しみ」と述べていた。このことについてのお考えは?

A:私たちは今回の演出でフロレスタンを、常に希望を抱いている人、として描いている。彼は、希望につながる要素が見えている間は、理想を失わない。一方で、フロレスタンという人はリアリストだと思う。希望を与えてくれる要素が無くなるとわかったら、自分の境遇に対してリアルな反応をする人。賢明なリアリストだからこそ、ある段階で自分の境遇を受け入れられる、現実的な見解を持つ人。風車に闘いを挑むことはしない人だと考える。

Q.21世紀のオペラの可能性についてどう考えるか。

A:オペラにはこの先もチャンスがあると思う。それはオペラが人間の感情に訴えるからであり、音楽は素晴らしいものだから。人々はライヴの体験の価値を理解している。どの公演も1回1回違うかけがえのないもので、お客様もそこに参加して一部を担っている。オペラには視覚的な要素があり、技術も進化しているので、これまで以上にチャンスがあると思う。

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飯守泰次郎

 

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関西フィルハーモニー管弦楽団第290回定期演奏会〜
ブルックナー交響曲全曲ツィクルス第8回(2018/3/31)に向けて

−飯守泰次郎−

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弁天町オークホールでのリハーサル
弁天町オークホールでのリハーサル

飯守泰次郎です。2011年から1年に1曲というペースで続けている関西フィルとのブルックナー全交響曲ツィクルスも、いよいよ、規模においても最大、演奏時間も最長の大曲、第8番です。

この交響曲は、ベートーヴェンの「運命」や、ブラームスの交響曲第1番と同様に、ハ短調で始まりハ長調で終わります。「闘いから勝利へ」というこの構成は、ドイツ系の交響曲の1つの典型です。

しかしブルックナーの場合、彼が意味したものは「闘いから勝利へ」という典型とはどこか異なるように感じられます。 全曲を締めくくる第4楽章のコーダで、第1楽章のテーマが戻ってきます。そして最後に向けてどんどん幕が開いていくようで、これはいったい天国に向かうのか地獄に向かうのか…最後はハ長調で、くずおれるような下行形で終わるのです。ベートーヴェンやブラームスのような絶対的な「勝利」に至るのではなく、いわば「精神的な気高さ」に到達する、とでもいうべきでしょう。
後期ロマン派の巨大なオーケストラ
後期ロマン派の巨大なオーケストラ
この偉大な交響曲がもつ特別な精神性を表現するには、指揮者もよほどの経験が必要で、いくら勉強しても、私のような年齢になってもまだまだ足りない、という気がしてくるほどです。

関西フィルとは、ワーグナーの楽劇をはじめとする演奏会形式のドイツ・オペラを含め、様々なレパートリーを共に積み重ねたうえでブルックナー・ツィクルスに取り組んでいるので、演奏が成熟してきている手ごたえを感じています。
年に1度のこのツィクルスに向けて、楽員の皆さんが精進を重ね、新鮮な好奇心をもって演奏に臨んでいることを感じ、私も大変やりがいがあります。皆様のお越しをザ・シンフォニーホールでお待ちしております。

関西フィル コンサートマスターの岩谷祐之さんと終演直後に
関西フィル コンサートマスターの岩谷祐之さんと
終演直後に

 

飯守泰次郎

 

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ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第134回
“飯守による、珠玉のベートーヴェン&ワーグナー”(2018/2/25)に向けて

−飯守泰次郎−

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ミューザ川崎シンフォニーホールでのリハーサル
ミューザ川崎シンフォニーホールでのリハーサル

飯守泰次郎です。ミューザ川崎シンフォニーホールで、東京交響楽団との「名曲全集 第134回」に向けてリハーサルが始まりました。
プログラムの前半はベートーヴェンで、歌劇『フィデリオ』の序曲と、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」で、ソリストは津田裕也さんです。そして後半はワーグナーの楽劇『神々の黄昏』から、”夜明けとジークフリートのラインへの旅”、”ジークフリートの葬送行進曲”、そして“ブリュンヒルデの自己犠牲”を演奏いたします。

『フィデリオ』は、ベートーヴェンが作曲した唯一のオペラです。このオペラは様々な要因でなかなか成功せず、ベートーヴェンは何度も改訂を重ねました。結局、彼はこのオペラのために、序曲『レオノーレ』第1、2、3番、そして『フィデリオ』序曲、という4つもの序曲を書いたのです。
このうち序曲『レオノーレ』第1〜第3番はいずれも、オペラの中で歌われるアリアを用いて作品の精神を見事に凝縮した、大変素晴らしい音楽なのですが、なぜかオペラとしての成功にはつながりませんでした。4番目に作曲された『フィデリオ』序曲は、それまでの3曲とは雰囲気も調性も全く異なり、オペラ本編には出てこないテーマで作られているのですが、この序曲によって上演が成功を収めたのです。お客様に、オペラ本編も聴きたい、と期待を高めていただけるような演奏をしたいと思います。

ピアノ協奏曲第5番「皇帝」は、まさに「名曲全集」に最もふさわしい作品です。津田裕也さんとはもう何度も共演しており、いつも若々しい素晴らしい演奏をしてくださる、私の信頼しているピアニストなので、とても楽しみにしています。
示導動機を確認しながら
示導動機を確認しながら
東京交響楽団は、ここ数年とくに共演する機会が増えているオーケストラで、昨年も新国立劇場『ジークフリート』のピットで長くご一緒して素晴らしい経験を共有することができました。今回は同じ『ニーベルングの指環』から、『神々の黄昏』の3つの名場面を演奏します。

ワーグナーを演奏する上で一番重要なことは、やはり示導動機です。
ジークフリート、ブリュンヒルデ、ラインの乙女たち…といった登場人物や、指環、ワルハラ城、炎、剣、槍(または「契約」)といった事物、「英雄ヴェルズング族の苦難」、「ジークフリートとブリュンヒルデの夫婦としての愛」、さらには「運命」「苦痛」などの示導動機を楽員が理解し、明確な意志をもって演奏しなければなりません。示導動機は、単なるメロディやテーマではなく、いわば音楽的な“理念”であり、そのように演奏されて初めて、それを聴いた聴衆が物語のドラマを瞬時に直感し理解することができるのです。

特に“葬送”は、巨大な『ニーベルングの指環』四部作という合計15時間超のドラマを締めくくる第1のフィナーレ(“自己犠牲”が第2のフィナーレ)ともいえる場面であり、多数の示導動機が極めて複雑かつ壮大に見事に組み合わされています。殺されたジークフリートの生涯が回顧され、彼が生まれるきっかけとなった『ワルキューレ』第1幕のジークムントとジークリンデの出会いが、「ヴェルズンクの苦難」「ヴェルズンクの愛」「ジークリンデ」などの示導動機によって聴衆の脳裏に(意識してもしなくても)蘇り、偉大な英雄が犠牲となった痛ましさがいっそうありありと表現されるのです。

この「名曲全集」のシリーズは、本番と同じミューザ川崎シンフォニーホールの舞台でリハーサルができて、響きを作っていく上で最高の環境であり、幸せに思います。本番は2/25の日曜日です。ミューザ川崎で皆様のお越しをお待ちしております。

 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場 新制作『松風』の千秋楽(2018/2/18)によせて

−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。新国立劇場の新制作『松風』(2/16,17,18)は、早くも本日2/18千秋楽を迎えます。
これほど素晴らしい作品の上演が、6年越しの念願がついにかなって実現でき、しかも3公演とも全席完売、というお客様の極めて熱狂的な反応に接し、大変嬉しく思っております。千秋楽にあたって、もう一度この作品の魅力をお伝えせずにはいられません。

いわゆる「現代音楽」は、熱く幅広い反応には結びつきにくい難しいジャンル、と思われがちです。にもかかわらず、新国立劇場のお客様が『松風』をこれほど明確に力強く受け容れてくださったのは、どれだけこの作品の国内上演が待望されていたかを如実に示しており、それもやはりただただ、細川さんの作品が現代音楽を超える内容を持っているからだと思います。

かねてから細川さんのヨーロッパでの活動を注視し、新国立劇場オペラ芸術監督として日本人作品の新制作に携わる立場になるからにはどうしても細川さんの作品を新国立劇場で上演したい、と強い意思を抱いた2012年から、彼と様々な議論をしてきました。

細川さんが能の本質を「浄化」させる劇、とおっしゃるのは、言い換えれば、この世の思いに囚われてあの世に行けない妄執からの「救済」を扱っている、と私は理解しています。 「救済されたい」という気持ちは誰にでもあり、洋の東西を問わず人間の根源にあるものです。

その一方、細川さんの音楽は日本人独特の自然観に基づいており、風の音、水の音など、静かな音楽で表現され、誇張がありません。彼の自然な音の受け止め方が、ヨーロッパの人々からは日本人ならでは、と感じられ、日本人にはまさに自分の中にあるものとして共感されるのだと思います。

結局、『松風』という作品の素晴らしさは、能の本質でありなおかつ文化の違いを超えて人間共通に理解される「救済」という普遍的な要素と、日本人固有の自然に対する感覚を併せ持っていることにあります。だからこそ、欧米で幅広く共感を集め、日本でもここまで熱狂的かつ新鮮に受け入れられるのだと思います。

そしてサシャ・ヴァルツ氏による今回のプロダクションは、その両者がこれ以上考えられないほど見事に一体化して実現されています。「コレオグラフィック・オペラ」という新しい形態によるこのプロダクションを日本で上演するには、作品を深く理解し高い能力を持つ音楽家、サシャ・ヴァルツ&ゲスツのダンサー、ユニークな舞台美術を実現するスタッフなどの専門的な集団を一体として招聘することが不可欠であり、まさに新国立劇場でなければなしえない、困難で価値のある仕事です。 上演にかかわってくださる、国内外すべての皆様に深く感謝しています。

細川俊夫さんの音楽の持つ静かさと、劇的な激しさのコントラストについては、先日のMessageでも触れました。 静かなところは怖くなるくらいに静か、しかし内面が劇的に噴出するところはまた怖くなるほど激しく、あそこまで豹変する表現が、物静かな細川さんのお人柄の一体どこから生まれるのだろう、と思います。
細川さんは「私は自分の音楽が、自然の響き、宇宙の響きの一部分でありえるような音楽を生み出したいと願い続けてきた」とおっしゃっています。音楽が宇宙の響きの一部分、ということは、私が常々リハーサルでオーケストラに伝えていることとまさに同じで、作曲家としての彼の態度の根底にあるものがどこか、演奏家としての私の根底にあるものと相通ずるようにも感じられます。どうしても細川さんの作品を新国立劇場で、という初志を揺らぐことなく貫けたのも、やはり音楽そのものの力に支えられたのでしょう。

間もなく最終公演が始まりますが、これを機に、これからも新国立劇場で細川俊夫さんの作品はもちろんのこと、日本人による優れたオペラ作品が一層力強く上演されていくことを強く願っています。

 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場2017/18シーズン
新制作『松風』(2018/2/16・17・18)によせて

−飯守泰次郎−

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細川俊夫氏と
細川俊夫氏と

飯守泰次郎です。新国立劇場の新制作『松風』(2/16,17,18の全3公演)が2/16に初日を迎え、大きな成功のうちに終演いたしました。

私は2012年にオペラ芸術参与に就任した当初から、ぜひとも細川俊夫氏の作品を新国立劇場で上演したい、と強く望み、細川氏とも色々と相談を重ねた結果、『松風』を新国立劇場で日本初演することになりました。

この作品は能の「松風」を題材に、世阿弥の原作からハンナ・デュブゲン氏が書き下ろしたドイツ語台本によってオペラ化されたもので、1幕物(上演時間約1時間半)です。

2011年にベルギーで初演されて以来、欧米を中心に50回も上演されるなど、すでに非常に高い評価を受けている邦人作品であり、ついに新国立劇場で取り上げることができて、大変嬉しく思います。日本人作曲家によるオペラ作品の上演が新国立劇場の大変重要な使命であることは、もはやいうまでもありません。
振付家のサシャ・ヴァルツ氏と
振付家のサシャ・ヴァルツ氏と

今回は、現代を代表する振付家サシャ・ヴァルツ氏の振付・演出による「コレオグラフィック・オペラ」という形態での上演で、細川氏が最も信頼するプロダクションです。

ソリストも、新国立劇場合唱団も、現代舞踊のダンサーの方々と一緒に踊りながら歌う、という非常に難易度の高い歌唱が実に見事です。
ピア・マイヤー=シュリーヴァー氏と、ベルリンで活躍する塩田千春氏の美術によるインスタレーションの舞台も大変美しく、効果的です。

細川俊夫氏の音楽はとても静かで、響きが自然で、このような大きな舞台作品であってもどこか室内楽的な要素が感じられます。その一方で全く違う別の面を見せるのです。彼の音楽の持つ静かで自然なキャラクターと正反対の恐ろしいほど劇的で激しい音楽が噴出するのです。
デヴィッド・ロバート・コールマン氏指揮の東京交響楽団は、変則的な編成にもかかわらず、集中度の高い素晴らしい演奏です。

初日から客席は大変賑わっていて、オペラ・ファンだけでなくダンスや美術のファンも多くいらしているためか、いつもとはまた異なる活気が溢れています。
公演はあと本日2/17(満席とのこと、キャンセル待ち等のお問い合わせは新国立劇場03-5352-9999へ)、および明日18(残席僅少とのこと)の2回ございます。皆様のお越しを心からお待ちしております。

 

飯守泰次郎

 

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九州交響楽団第365回定期演奏会(2018/2/9)によせて
−飯守泰次郎−

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アクロス福岡シンフォニーホールでの本番
アクロス福岡シンフォニーホールでの本番
(写真提供:九州交響楽団)

飯守泰次郎です。九州交響楽団の定期演奏会に向けたリハーサル中で、久し振りに九州に来ております。

今回のプログラムの前半は、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番ト長調で、ソリストは松山冴花さんです。松山さんとはこれまでも、ブラームス、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、とドイツ音楽を代表するヴァイオリン協奏曲の大曲・名曲で共演してきたので、今回のモーツァルトもとても楽しみにしています。

プログラムの後半は、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』を約1時間に凝縮してお届けします。これは、オランダ放送フィルの打楽器奏者であるヘンク・デ・フリーヘル氏による「オーケストラル・アドヴェンチャー」という編曲版です。

私も今まで、シンフォニー・コンサートで『指環』の抜粋を演奏したことは数えきれないほどありますが、この編曲版は初めて指揮いたします。本来なら全部で約15時間、上演に4日かかる巨大な作品である『指環』の名場面が見事に1時間の作品として凝縮されていて、驚くばかりです。『ラインの黄金』冒頭のEs(変ホ)の音から、『神々の黄昏』の最後の和音まで、14のシーンに見事にまとめてあり、明日演奏するのがとても楽しみです。
四管編成の巨大なオーケストラ

四管編成の巨大なオーケストラ
(写真提供:九州交響楽団)

このたび、九響と12年ぶりの共演が叶い、大変嬉しく思います。以前、1999年の定期でもワーグナー・プログラムを演奏し、その後も数回ご一緒して、ブルックナーの交響曲第9番などで共演しました。楽員の皆さんが非常に積極的で、今回はさらにワーグナーの深みに到達できそうです。

それでは明日2/9、アクロス福岡シンフォニーホールで、皆さまのお越しをお待ちしております!

 

飯守泰次郎

 

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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第52回ティアラこうとう定期演奏会 (2018/2/3) によせて

−飯守泰次郎−

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ティアラこうとうでのリハーサル
ティアラこうとうでのリハーサル

飯守泰次郎です。2/3は、東京シティ・フィルの第52回ティアラこうとう定期演奏会です。モーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲、次に青木尚佳さんをソリストにお迎えしてベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、そしてチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」というプログラムです。

歌劇『ドン・ジョヴァンニ』は、人間性の深いところまで踏み込む内容をもっており、モーツァルトの中でも私が最も敬愛するオペラです。この序曲の冒頭はニ短調で、オペラの第3幕で騎士長が現れてドン・ジョヴァンニに反省を迫る場面の音楽で始まります。この部分は、もはやベートーヴェン的といえるほどシリアスで力強く、シンプルでありながら劫罰の恐ろしさを見事に表現しています。最初の和音で低音が残るように書かれていることも斬新です。このような劇性と音楽の深いエネルギーを持つ『ドン・ジョヴァンニ』は、まさに傑出した作品なのです。
しかもモーツァルトは、深く劇的な内容を持つこの序曲を、他の人々と食べ物をつまんだり、かなり下品な冗談を言いながら、食卓で書いたという話があります。しかし、『 ドン・ジョヴァンニ』に限らず、彼のト短調の楽曲や、晩年の39、40、41番の交響曲などは、何かの経験が凝縮して本人も気付かないままに非常な深み、あるいは高みに到達しているようなところがあります。

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、いうまでもなく古今のヴァイオリン協奏曲の中でも特別な大曲です。ソリストの青木尚佳さんとは、以前も共演したことがあり、ベートーヴェンは初めてですが、とても若々しく、しかもベートーヴェンの力強さを良く表現しています。

「悲愴」の第3楽章
「悲愴」の第3楽章

チャイコフスキーというと、旋律の魅力や見事なオーケストレーションの力で圧倒的な演奏効果を得やすいのですが、私と東京シティ・フィルは、もっと深く彼の創造の根底にあるロシア的な本質に肉迫したい、と強く願って2011〜2012年にかけてチャイコフスキーの全交響曲ツィクルスを行いました。その演奏は交響曲全集のCDにもなり、ご好評いただいております。
今回、ティアラこうとう (定員1228名)の空間で「悲愴」をお聴きいただくことは新しい挑戦になりますが、やはり以前に1年間にわたりチャイコフスキーに集中した経験がオーケストラの中に豊かに蓄積されている、と実感しながら、ティアラこうとうの響きを活かした演奏をともに創っているところです。

週末にかけて、都内も積雪が予想されておりますが、今回の3曲は厳寒の季節にふさわしいプログラムともいえます。暖かくして足元にお気を付けて、ぜひティアラこうとうへお越しください。皆様のお越しを、心よりお待ちしております!

 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場2017/18シーズン半ばによせて

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個人賛助会員の皆様をお迎えしてご挨拶
個人賛助会員の皆様をお迎えしてご挨拶

飯守泰次郎です。新国立劇場オペラ芸術監督として4シーズン目となる2017/18シーズンも、昨秋より『神々の黄昏』、『椿姫』、『ばらの騎士』、『こうもり』を上演し、間もなく2/16には細川俊夫氏の『松風』(日本初演)のプルミエを迎えます。

先日、『こうもり』千秋楽の終演後には、個人賛助会員の方々との懇親会が開催されました。

バレエ芸術監督の大原永子氏、演劇芸術監督の宮田慶子氏、『こうもり』に出演した歌手の皆さん、そして新国立劇場バレエ団のダンサーとともに、お客様とひとときの交流を持つことができました。

『こうもり』の物語の筋は他愛無い内容ですが、大人が気軽に余裕をもって楽しめる、実に楽しいオペレッタです。まさに、最高の娯楽のひとつとしてのオペラの醍醐味を味わっていただける作品だと思います。千秋楽ということで、ひときわ高揚感のある、華やかなパーティーとなりました。

『こうもり』出演者の皆さん
アドリアン・エレート(アイゼンシュタイン)、エリーザベト・フレヒル(ロザリンデ)、ハンス・ペーター・カンマーラー(フランク)、ステファニー・アタナソフ(オルロフスキー公爵)、村上公太(アルフレード)、クレメンス・ザンダー(ファルケ博士)、ジェニファー・オローリン(アデーレ)、フランツ・スラーダ(フロッシュ)の各氏

私からは皆様に、この20年間のご支援への感謝と、今後の新国立劇場の発展への期待をお伝えし、私が芸術監督として最後に新国立劇場で指揮する『フィデリオ』に、ぜひ全ての皆様にいらしていただきたい!とお話ししました。
2017/18シーズンは、『松風』プルミエの後、『ホフマン物語』『愛の妙薬』『アイーダ』、と特に人気のあるプロダクションが続々と再演されます。カタリーナ・ワーグナーによる新演出『フィデリオ』は5/20プルミエ、そして任期最後の上演演目は、私の特に愛するプッチーニの『トスカ』です。
ホームページをご覧の皆様、ぜひオペラパレスでお会いしましょう!


アドリアン・エレート氏と
アドリアン・エレート氏と
 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場20周年記念特別公演
『フィデリオ』(2018/5/20,24,27,30,6/2)に向けて

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飯守泰次郎です。新国立劇場開場20周年記念特別公演ベートーヴェン『フィデリオ』は、私が新国立劇場オペラ芸術監督として指揮する最後の演目となります。これまで新国立劇場でワーグナー作品を7演目指揮してまいりましたが、任期の締めくくりに、指揮者として私が特に集中して掘り下げ続けてきたベートーヴェンの、唯一のオペラに取り組めることを、心から嬉しく思います。
本日1/26よりオープンした新国立劇場『フィデリオ』特設サイトのトップページに、以下のとおり私からのメッセージが掲載されております。ホームページをご覧の皆様にもぜひお読みいただきたいと思います。

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『フィデリオ』の奥深さに徹底的に迫る

『フィデリオ』は、ベートーヴェンが作曲した唯一のオペラです。ベートーヴェンは、『英雄』『運命』『第九』等の交響曲に代表されるように、「音楽によって人々をより崇高な世界へと導きたい」という熱狂的な欲求を持っていた、特別な作曲家です。

当時のオペラは、恋のもつれや嫉妬、裏切りなど、生の人間の姿を等身大で楽しみ、美しい声と歌唱の技巧を堪能するものでした。ベートーヴェンはそのような娯楽性を受け入れることができず、自分の理想に合致する台本を探し求めて苦労しました。そして、フランス革命の時代を背景に流行した「救出劇」と呼ばれる題材の中に、「より良く、より高貴な人間像」を描くにふさわしい、権力闘争に勝利する気高い夫婦愛、という崇高なテーマを見出したのです。

第1幕は世俗的で小市民的な場面から始まりますが、監獄所長ドン・ピツァロが登場すると、物語は一気に絶望と闘争に焦点が絞られていきます。歌とセリフで物語が進行するジングシュピール(歌芝居)と、最終場面のオラトリオのような合唱を、ひとつのオペラとして成り立たせているのは、やはりベートーヴェンの音楽の圧倒的な力です。

男装してフィデリオという偽名を使い、夫を救うために命を賭けて監獄に乗り込むレオノーレが、内心から沸きあがる決意と希望を歌い上げるアリアは、女性に対するベートーヴェンの高い理想像が凝縮されています。「囚人の合唱」では、「闇から光へ」というベートーヴェンの一生を貫くテーマが、感動的な響きで歌われます。第2幕で、長く地下牢に幽閉されているフロレスタンが初めて登場するアリアも、高潔な人格が見事に表現されています。 そして、フィナーレの合唱「素晴らしい妻を得た者はこの歓呼に参加せよ」は、その後もベートーヴェンの中で一生かけて温められ、20年後に作曲する『第九』で交響曲史上初めて用いられた声楽によって、同じ内容が再び高らかに歌われることになるのです。

『フィデリオ』、および交響曲を中心とするベートーヴェンの作品が、音楽史の流れを革命的に変えたことは、もはや言うまでもありません。しかし現代の社会は、「偉大なベートーヴェン」に慣れてしまい、私たちに語りかけるベートーヴェンの力強い本質にはいまだ到達できていないように思われます。『フィデリオ』が作曲されたのは、ヨーロッパにおける時代の大きな転換期でした。私たちも今、同じような転換期に生きています。新国立劇場20周年という節目こそ、彼の唯一のオペラの内容に改めて深く切り込むべき時、と考え、世界のオペラの次世代を担う特別な演出家であるカタリーナ・ワーグナーに演出を依頼しました。皆さまとともに『フィデリオ』の真の奥深さに徹底的に迫り、私の新国立劇場オペラ芸術監督としての4年間を締めくくりたいと思います。

新国立劇場オペラ芸術監督 飯守泰次郎

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飯守泰次郎

 

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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第312回定期演奏会
〜ブラームス交響曲全曲演奏シリーズI(2018/1/20)〜
によせて
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。1/20は、東京シティ・フィルの定期演奏会です。 東京シティ・フィルとはこれまで、ベートーヴェン全交響曲ツィクルス(2回)をはじめ、ハイドン、メンデルスゾーン、シューベルト、シューマン、ブルックナー等の交響曲に長い時間をかけて共に取り組んできました。ブラームスも、かつて2001年に「ハイドン・ブラームス・シリーズ」 として1年をかけて全交響曲を演奏しました。
このたび、今年と来年の2年がかりで「ブラームス交響曲全曲演奏シリーズ」として、改めてブラームスの交響曲に集中して取り組むことといたしました。その第1回として1/20は、第2番ニ長調と第4番ホ短調の2曲を組み合わせて演奏いたします。 なお、音楽的判断にもとづき、やはりブラームスの創作の順に従い、コンサートの前半に交響曲第2番、後半に第4番の順で演奏することといたしました。創作の深まりをより一層感じていただける、と思います。

東京シティ・フィルは、コンサートマスターの戸澤哲夫さんを筆頭に、私が常任指揮者を務めていた頃から蓄積してきた豊かな経験を土台に、今も変わらず私の音楽をとても良く理解してくださいます。近年の若々しい新たな楽員の方々のパワーもあいまって、非常に集中したリハーサルが進んでいます。

交響曲第2番は、後期ロマン派の交響曲ではあるのですが、 一方で作品のすべてがいわば自然現象ともいえる、特別な魅力を持っています。中でも第2楽章は、この楽章ならではの音のキャラクターというべきものがあり、特にロマンティックで深く厚い響きが求められる、難しい楽章です。

交響曲第4番は、ウィーン古典派の伝統を受け継いで生涯にわたり古典的な作風を重んじたブラームスの円熟の極みであり、彼の最後の交響曲です。第4楽章ではバロック時代の「パッサカリア」という形式が厳格に用いられて、ブラームスの作曲技法の粋が多彩な変奏に注ぎ尽くされます。全曲を通じて、充実した低音とひときわ分厚い響きが必要です。

ブラームスに限らずどんな作曲家でも大切なことは、弾く(吹く)前に、自分の出す音を想像し、心からその音を求めることです。
そもそも、何もないところに音楽を生み出す作曲家は、心の中でその音を想像して作曲しています。そして演奏家も、まだ存在していない音を生み出す、という意味でやはり作曲家と同じように、これから生まれる音を、演奏する前に想像することは全く当然なことなのです。
そしてもうひとつ大切なのは、後期ロマン派の大きなオーケストラであっても、お互いに聴き合うことです。

このようなことを大切にして培ってきた、私とシティ・フィルならではの響きにさらに磨きをかけて、ブラームスの交響曲をお楽しみいただきたいと思います。オペラシティで、皆様のお越しをお待ちしております。

 

飯守泰次郎

 

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ホームページをご覧の皆様へ
2018年を迎えて〜新年のご挨拶〜
−飯守泰次郎−

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新国立劇場メインエントランスにて
〜草月流家元 勅使河原茜氏によるウェルカムフラワーとともに
新国立劇場メインエントランスにて
〜草月流家元  勅使河原茜氏によるウェルカムフラワーとともに

飯守泰次郎です。ホームページをご覧くださっている皆様、明けましておめでとうございます。どのように新年をお迎えになられたでしょうか。

新年最初のコンサートは、大阪の豊中市立文化芸術センター開館1周年を記念する、オペラ・ガラ・コンサート(1/7)です。日本を代表するオペラ歌手の方々と共に、バラエティ豊かなオペラの名曲をお贈りします。オーケストラは、ここ数年でご一緒する機会が続いている日本センチュリー交響楽団です。

今年は、2014年秋から務めてきた新国立劇場オペラ芸術監督としての任期を締めくくる年になります。4月からは新たに、仙台フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任することも大変楽しみです。

新国立劇場で芸術監督として指揮する最後のプロダクションとなる「フィデリオ」(カタリーナ・ワーグナーによる新演出/5〜6月)をはじめ、仙台フィルの定期演奏会(6月、11月)東京シティ・フィルとのブラームス交響曲ツィクルス(1/20)関西フィルと続けているブルックナー全交響曲ツィクルス(3/31)、そして各地での様々なコンサートで、皆様をお迎えできることを心から楽しみにしております。
今年は戌年、でもやはりネコ年?
今年は戌年、でもやはりネコ年?

 

飯守泰次郎

 
 
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