メッセージ:2012年7月〜9月  

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札幌交響楽団名曲シリーズ〜
音楽で紡ぐ物語3「ドラマティック・オペラ」(2012/9/29)を振り返って

−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。スケジュールに忙殺されてご報告が遅くなってしまいましたが、先週は札幌交響楽団の名曲シリーズで久しぶりに北海道に行きました。

今回は、「森の響フレンドコンサート」と題されたシリーズで、「音楽で紡ぐ物語3〜ドラマティック・オペラ」という副題のついたコンサートでした。イタリア、フランス、ドイツの9人の作曲家による、オペラの序曲、間奏曲、前奏曲などを計10曲、というプログラムです。

このようなプログラムは、実際のところ、たとえば長大な交響曲1曲を演奏するよりもよほど大変な面があります。曲によって、オーケストラに求められる音色も表情も大きく異なるので、それぞれの曲の内容を本当に深く理解したうえで、さらに余裕をもって演奏しなければ、お客様に文句なく楽しんでいただくことは難しいのです。

札幌市郊外の「芸術の森」の中にある、この札幌コンサートホールKitaraに来ると、毎度のことながら改めて素晴らしいホールだと思います。きわめて響きが素晴らしいのはもちろんのこと、コンサートホールらしい輝かしく華やかな雰囲気で、演奏していて私も幸福感に満たされました。

たくさんの拍手をいただいて、アンコールに「ローエングリン」から第3幕への前奏曲を演奏しました。オーケストラと聴衆が一体となって楽しめたコンサートになったと思います。
札幌交響楽団とご一緒するのは3年ぶりでしたが、素晴らしい環境の中でオーケストラがますます発展していることを実感し、とても嬉しく思いました。

飯守泰次郎

 

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二期会創立60周年記念オペラ公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)
『パルジファル』稽古場だより(5)〜GPその2〜2012年9月
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。二期会創立60周年記念公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)もいよいよ初日を迎えます。

GPの様子
GPの様子

今回はきわめて大掛かりな舞台装置で、しかも回転しながら場面が移り変わっていくのが特徴です。演奏家は、変化に富んだ動きに対応しながら、常に方向感覚を保っていなければならず、しかも難しい演技が求められています。セットは高いところで約7メートルほどあり、オーケストラや指揮者とのコンタクトも困難が伴います。人によっては高所恐怖症を克服しながら歌い、演技しなければならないこともあるでしょう。歌手にとって、様々な能力が問われる演出ですが、表現の幅は非常に多岐にわたっています。

崩壊していく聖杯騎士団を、崩壊していく病人の家族に置き換えているのが、クラウス・グート演出の読みの深いところです。もちろん宗教性も非常に色濃く、前面に押し出されていますが、トラディショナルな『パルジファル』をご存じの方々は驚かれることも多い演出だと思います。最後の救済の場面も、伝統的なやりかたを望まれる方はびっくりされるかもしれません。

この作品には、いまだに謎が解けていない有名な言葉が2つあります。

GPの舞台

第1幕でのグルネマンツの言葉「ここでは時間が空間となる(Raum wird hier die Zeit)」に続く「場面転換の音楽」は、まさに時間と空間を超越した音楽です。これに比することができるとすれば、バッハのオルガン作品(トッカータなど)くらいしか考えられません。この「場面転換の音楽」の宇宙は、さらに深く、二度と例のない音楽です。

もう1つの有名な言葉は、全曲の幕切れに合唱によって歌われる「救済者に救済を!(Erloesung dem Erloeser!)」です。

これらの言葉が歌われるとき、オーケストラのひとつひとつの楽器が演奏していることは決して複雑ではありません。しかしそこに込められている、今も解き明かせない意味合いを伝えるのは、音楽なのです。

ワーグナーが『パルジファル』に込めた内容は必ず、今回も演出全体の中に隠されています。これが音楽とどういうふうに結びついてゆくか、それは聴衆の皆さまと私たちとで実際に作っていくもので、本番になってみないと私にもわからないのです。とにかく私は全力を尽くしてまいります。

飯守泰次郎

 

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二期会創立60周年記念オペラ公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)
『パルジファル』稽古場だより(4)〜GP〜2012年9月
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。二期会創立60周年記念公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)もいよいよ初日が迫り、本番会場である東京文化会館で大詰めの通しリハーサルを迎えております。オーケストラはオーケストラ・ピットに入り、歌手は舞台で衣裳をつけてセットの中で演技をしながら歌い、本番通りに全曲を通します。この段階では、声と管弦楽のバランスの最終調整も非常に大切です。

読売日本交響楽団と東京文化会館のオーケストラ・ピットに入る(写真提供:東京二期会)
読売日本交響楽団と東京文化会館のオーケストラ・ピットに入る
(写真提供:東京二期会)

ワーグナーが革新的な作曲技法や演奏法を次々と導入したのは、『ニーベルングの指環』まででした。『パルジファル』のオーケストラの楽譜を『ニーベルングの指環』や『トリスタンとイゾルデ』に比べると、一見するとむしろ易しいようにも思われるかもしれません。

しかし、それまでと同じ技法で書かれていながら、この作品は込められた“心”が全く違うのです。彼が30年間にわたって構想を温め続けたのも、宗教性、愛、人間の実生活、そして救済の問題……他に類をみない作品になることがワーグナー自身によくわかっていたからだと思います。

『パルジファル』のオーケストレーションを一言で表すならば“ブレンドのオーケストレーション”です。何の楽器の音か判然としない、溶け合った響きが全編を支配しています。木管楽器か金管楽器かわからない、よく聴くと弦楽器も入っている、といったふうで、オーケストラの楽器の音色が完全にブレンドしているのです。宗教性と官能性、善と悪、男性と女性…といった相反するものが混じりあう複雑な内容と一体となったこの素晴らしいオーケストレーションこそ、ワーグナーが最晩年に到達した、『パルジファル』にしかない表現です。

オーケストラは、示導動機をハッキリと演奏しながら互いに絡み合い、なおかつ歌手の声とブレンドすることが求められます。また、物語の中には口汚いやりとりなどもあり、場面によっては宗教性からかけ離れた、もう音楽ではないとさえいえる、破壊的で暴力的な響きを求められる場合もあります。

さらに、登場人物の会話につれて次々と変化していく調性のそれぞれに、必ず意味があります。パルジファルの動機が英雄的な変ホ長調で現れたり、非現実的な神性について語られるときは変ハ長調、そして第1幕冒頭の前奏曲と終幕の最後はそれぞれの調性が持つ意味合いを感じ取り、オーケストラの表現する宇宙がガラリと変わることが必要なのです。

ワーグナーが楽譜に書いた複雑な指示に従うことはもちろん、さらに奏者の感性というものが非常に重要になるのです。

飯守泰次郎

 

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二期会創立60周年記念オペラ公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)
『パルジファル』稽古場だより(3)〜歌・オケ合わせ〜2012年9
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。読売日本交響楽団とのオーケストラだけの集中練習を終えて、9月4日から、いわゆる歌合せ、つまり歌手とオーケストラの合わせ練習が始まりました。
これまではピアノによる通し稽古でしたので、オーケストラと合わせることにより、いよいよ実感の湧く練習ができ、まさに音楽的にも佳境にさしかかりました。

上演に長時間かかるということは練習にも長い時間を要し、また出演する人数も多いのですが、二期会はとても優秀な歌い手を、しかもダブルキャストで揃える余裕があり、私としても大変やりがいがあります。

読売日本交響楽団は、『パルジファル』日本初演(1967年、若杉弘氏の指揮)で、今回と同じ東京文化会館のピットで演奏したオーケストラです。さらに2002年にも、読売日本交響楽団創立40周年記念として『パルジファル』(ゲルト・アルブレヒト氏の指揮)を舞台上演しています。
きわめて上演機会の少ないこの作品を今回で3回目ということで、もちろん演奏者はだいぶ入れ替わってはいても、やはり経験を積んでいる方々も残っていて、とても素晴らしい音がしています。

『パルジファル』という作品の特徴は、宗教性を非常に深く掘り下げた内容と、その一方で生身の人間の現実、弱さ、生きざまが赤裸々に描かれていることです。宗教性、憎しみと愛、そこに絡む官能性……それらをここまで追求した作品は、他に例がないと思います。

この作品は、やはり一種の宗教劇であり、聖金曜日の奇跡を中心とするキリスト教的な内容をもっていますが、それだけに拠っているわけではありません。ユダヤ教、イスラム教、そして仏教からも様々な要素が取り入れられていながら、しかもそれらを特定していないということを、今回特に強く感じています。

たしかに表向きはキリスト教の要素が強く、実際にワーグナーは聖書を深く読み込んでいましたが、それだけではない北欧の神話伝説・宗教からの要素が根底に混在しているのです。やればやるほど、この作品の内容の深さに圧倒されています。

飯守泰次郎

 

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二期会創立60周年記念オペラ公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)
『パルジファル』稽古場だより(2)〜通し稽古〜2012年9月
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。今回の二期会創立60周年記念公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)では、ステージ上の場面転換が特別なやりかたで、舞台装置がゆっくりと回って場面を変えていきます。とても大掛かりなセットなので、立ち稽古は、芸能花伝舎という、廃校になった小学校(旧 淀橋第三小学校)の体育館だった建物で行いました。

回転する装置そのものを体育館で再現することはできないので、練習では人間の方が回る……つまり、会場の南北両方に1台ずつピアノを置き、場面が変わるごとに、演出家も指揮者も制作関係者すべてが移動する、という方法で行いました。音楽をいったん止めて移動することもあれば、音楽は止めずに2人のピアニストが正反対の側で演奏できるようにして、場面が変わるときは反対側にスタンバイした副指揮者が指揮し、その間に私が走っていく、というようなこともありました。このような特別な形態での稽古だったので、なかなかエネルギーを使いました。

この回転する舞台装置は2階建てになる予定ですが、立ち稽古の段階では2階建てではありません。そこで、本来の装置の寸法通りではありませんが、設えられた小さな階段を昇ることで2階に移動したつもりで進められました。

舞台装置が大掛かりであるだけに、このように立ち稽古では「つもり」の練習が多く、歌手の方々は「今、自分は舞台で前を向いているか、後ろを向いているか」「今、1階にいるか2階にいるか」といったことを意識していなければいけない難しさがあります。実際には装置がゆっくりと回転していく上で歌うわけなので、本番と同じ状況で稽古ができるのは東京文化会館での稽古の段階から、ということになります。

パルジファル(9/13・16)の福井敬さんと(写真提供:東京二期会)
パルジファル(9/13・16)の福井敬さんと(写真提供:東京二期会)

とにかく、この形態での通し稽古は終えることができました。クラウス・グート氏の演出は、好奇心を刺激し想像力をかきたてるものです。これから、歌手とオーケストラの合わせの練習を経て、東京文化会館でのプローベ(リハーサル)で、実際の動きも含めて仕上げていくことになります。

飯守泰次郎

 

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二期会創立60周年記念オペラ公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)
『パルジファル』稽古場だより(1)〜立ち稽古〜2012年8月
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。まだまだ暑い日が続いていますが、二期会創立60周年記念公演『パルジファル』(9/13・15・16・17)に向けて、いよいよ練習が佳境にさしかかっております。今は、すでに歌稽古を終え、立ち稽古も全3幕を一通り終えて磨きをかけている段階です。

立ち稽古の様子(写真提供:東京二期会)
立ち稽古の様子(写真提供:東京二期会)

ワーグナーの作品はどれも演奏時間が長いのですが、その中でも『パルジファル』は特に長い作品です。練習の時間も、全体の日程も、当然とても長いことになります。さすがにこの『パルジファル』に抜擢される歌手の方々は、どなたも素晴らしいエネルギーと集中力を備えておられ、連日、非常に熱心な稽古が長時間続いております。

私も長年、ワーグナーの演奏を続けてきていますが、ワーグナーを演奏する日本人の力量の水準が非常に高くなったことに、改めて驚かされています。

これから、9月の本番に向けて、厳しい残暑の中の稽古の様子をホームページをご覧の皆様にもお伝えしてまいります。本番は4公演あります。皆様、ぜひ東京文化会館にお越しをお待ちしております。

飯守泰次郎

 

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鈴木敬介 追悼コンサート
「オペラ名曲の夕べ」(8/20)によせて
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。8月20日は、日本を代表するオペラ演出家・鈴木敬介氏を追悼する、日生劇場のコンサートに出演します。

おそらく、日本で少しでもオペラに関わったことのある方々はすべて、何らかの形で「鈴木敬介」という名前と関わりがあると言っても過言ではないと思います。私も、1970年代から約40年間にわたり、数え切れない多くのオペラをご一緒できたことは本当にかけがえのない財産となっております。今の私のキャリアは、鈴木敬介さんの存在なくしては考えられません。仕事だけでなく、家族ぐるみでのお付き合いでした。
亡くなられてから1年になりますが、いまだに、彼がもういないということがどうしても受け入れられないままです。

今回のコンサートは、多くの演奏家が一堂に集まり、限られた時間のなかで心を合わせて、鈴木さんへの感謝を込めて演奏します。その中で私は、思い出深い『ワルキューレ』第3幕より“ヴォータンの告別”と、『コシ・ファン・トゥッテ』からいくつかのアンサンブルを演奏させていただきます。そして心からご冥福をお祈りしたいと思います。

飯守泰次郎

 

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ぐんまアマチュアオーケストラサマーフェスティバル2012 (8/16〜19)を終えて
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。「ぐんまアマチュアオーケストラ サマーフェスティバル」は、今年も非常な盛り上がりのうちに、本日の修了コンサートをもって閉幕いたしました。難曲に挑戦した甲斐のある演奏ができたと思います。修了式でお話しした内容の骨子を、ホームページをご覧の皆様に以下のとおりお伝えいたします。

***

「今日は、この暑い中をコンサートにいらしてくださってありがとうございます。まず、素晴らしい聴衆の皆様にお礼を申し上げます。
私は長年この太田に来ていますので、ここに素晴らしい演奏家が数多く集まっていらっしゃることをよく知っています。しかしコンサートは聴衆がいなければ成り立ちません。しかも皆様の中にはこの演奏家たちのご両親、ご家族が大勢いらっしゃいます。いつも、色々な大変なことも乗り越えながら、若い演奏家たちを支えてくださっていると想像致します。それだけに私たちも一層、演奏のしがいがあります。深く感謝しております。

私たち指導陣には長年の積み重ねがありますが、少しずつ歳も取ります。芸術学校の生徒さんたちが毎日めざましく変化し見事に成長していくことを、羨ましく思います。しかも、卒業していく人と新しく入る人がいて毎年顔ぶれが入れ替わるにもかかわらず、ここでは、不思議に思うほど全体が年々成長しているのです。そしてついに、今年はBオーケストラではショスタコーヴィチの交響曲第5番に到達することができました。

お聴きいただいたとおり、技術的にも非常に難しい大曲であるうえに、内容も非常に深い音楽です。ロシアは、政治と戦争が複雑に絡み合った悲劇的な歴史を持っています。それはつまり、莫大な犠牲が払われてきたということであり、そのすべてがこの名曲に結晶しているのです。この内容を若い演奏家のみなさんがどこまで理解できるだろうか、と私も最初は考えておりました。

今お聴きいただいた通りです。これはもう、子どもたちが弾いている演奏ではありません。私も、指揮しながら圧倒されておりました。これこそ太田であり、子どもたちの理解力は非常に素晴らしいものでした。

寺島先生が指揮されたAオーケストラも、やはり同じロシア音楽で、チャイコフスキーの「白鳥の湖」から難しい3曲を演奏しました。Aオーケストラでも数年前から、子どものために易しくアレンジした楽譜ではなく、作曲家が書いた通りのオリジナルで演奏しています。今日もチャイコフスキーが作曲した通りの楽譜を、見事に演奏することができました。

この成果を、指導陣も、演奏したみなさんも、誇りに思ってよいと思います。これは太田市だけの、日本の他の都市にも外国にもない、前例のない特別な場です。230人の演奏家のみなさん、講師の方々、そして会場の手配や子どもたちの移動の安全や体調にまで気遣いすべてを支えてくださる事務局とボランティアのみなさんが、一体となって作り上げたものです。心から、お祝いと感謝を申し上げます。」

飯守泰次郎

 

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ぐんまアマチュアオーケストラサマーフェスティバル2012 (8/16〜19)によせて
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。厳しい残暑が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今年も「ぐんまアマチュアオーケストラ サマーフェスティバル」のシーズンとなり、群馬県太田市に滞在しております。

このフェスティバルは「おおた芸術学校」が主体となって行われています。太田市は、自由な発想でスポーツや芸術に非常に力を入れている自治体で、「おおた芸術学校」では多くの子どもたちが、オーケストラ、合唱、演劇、バレエまで幅広い分野にわたって学んでいます。山本直純先生から受け継いだご縁で音楽監督を仰せつかり、長年のお付き合いになります。

フェスティバルでは今年も、力強く進歩してきている2つのオーケストラが演奏します。
Aオーケストラは小中学生中心で、寺島康朗氏が指揮します。以前はアレンジされた曲を取り上げていましたが、数年前からオリジナルな管弦楽曲を演奏できるようになりました。
今年も成長を楽しみにしています。

私が指揮するBオーケストラは、中高生と大人のアマチュアのみなさんが中心です。今年はショスタコーヴィチの交響曲第5番に挑戦します。 これはおそらく、難曲中の難曲といえるでしょう。
これまでも挑戦といえるような作品に取り組んできましたが、ショスタコーヴィチの5番は飛び抜けて難しい選曲と思われます。今まで何度か候補に上りながら、もう少し時を待つべきだろう、という判断で見送られてきました。今年はついに、その時が来たと、指導者の先生方と相談したうえで演奏することになりました。

民族の歴史、政治、戦争のみならず様々な闘争が複雑に絡み合ったこの作品を、若い人が多いこのオーケストラが、技術的にも内容面からもどのくらい理解できるのだろう、という疑問もあるかもしれません。これまで、チャイコスフキーの「悲愴」やブラームスの交響曲第4番など、若い時にはなかなか捉えにくい内容を持つ、演奏する際に成熟が求められる作品を演奏した時、Bオーケストラの皆さんが想像以上に深く理解する力を持っていることに驚かされました。今回も私は、若い人たちの理解力と可能性を信じ、大変期待しているのです。

飯守泰次郎

 

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「真夏の第九 こうとう2012」(8/4)によせて

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飯守泰次郎です。8月4日は“真夏の第九 こうとう2012”を指揮いたします。

年末の恒例となっている第九を真夏に演奏するこのコンサートは、江東区文化コミュニティ財団/ティアラこうとうの主催によるもので、2010年の公演以来好評を重ね、今年で3回目を迎えました。

100人近い「ティアラこうとう真夏の第九合唱団」の合唱指揮は、これまで数々のオペラを始めとする公演で私を支えてくださっている四野見和敏さんです。この合唱団の大きな特徴は、ヴォイス・トレーナーに荒井香織さんをお迎えし、発声に特に重点を置いていることです。

第九の合唱の発声はとても難しいのですが、一般の方々で構成されているこの合唱団で「無理なく美しい発声で第九を歌う」という努力を、3年間積み重ねてきました。

ソリストは、ソプラノが日比野幸さん、アルトが金子美香さん、テノールが与儀巧さん、そしてバリトンが萩原潤さんです。4人とも、発声のよい合唱団と非常によく調和する、若々しくて新鮮な声質をお持ちです。

オーケストラは、先日「ティアラこうとう定期演奏会」でも共演したばかりの東京シティ・フィルです。長年私と一緒に演奏してきて、よく理解しあえる東京シティ・フィルと、響きの美しいこのティアラこうとうで演奏できることを、毎回嬉しく思います。
合唱団の人数やホールの響きを考慮して、今回はベーレンライター版の楽譜を使用し、古楽器的な表現もとりいれて演奏致します。

難曲である第九ですが、この「真夏の第九 こうとう」では、今回も無理を感じさせず美しく表現できると思います。とても新鮮な第九になるに違いありません。
ぜひティアラこうとうでお会いしましょう。

飯守泰次郎

 

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新交響楽団第218回演奏会(7/22)によせて

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飯守泰次郎です。7月22日は、新交響楽団の第218回演奏会です。
今年は、新響とは2回にわたりマーラーの交響曲をとりあげます。4月の「大地の歌」に続き、今回は交響曲第1番「巨人」です。

プログラムの前半には、ベートーヴェンのバイオリン協奏曲を、ソロに松山冴花さんをお迎えして演奏します。
松山さんは、昨年も新響との共演においてブラームスのヴァイオリン協奏曲で大変素晴らしい演奏をしてくださいました。今年はベートーヴェンで、彼女の違う面を発揮してくださるのを期待しています。

このような大曲2曲による演奏会は、一般的にはあまり例がないと思います。演奏する側も、聴衆の皆さまも、相当なエネルギーが必要です。新響とは長いおつきあいで、お互いのことをよく理解しあえていますので、このユニークなプログラムで、素晴らしいコンサートになると思います。東京オペラシティ・コンサートホールでお会いしましょう!

飯守泰次郎

 

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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第30回ティアラこうとう定期演奏会(7/14)に向けて

−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。7月14日は東京シティ・フィルの第30回ティアラこうとう定期演奏会です。

東京シティ・フィルは、東京オペラシティ・コンサートホールとティアラこうとうで、2つの定期シリーズを開催しています。共にとても良い音響を持つこの2つのホールで演奏できることが、東京シティ・フィルのサウンドの成長にも非常にプラスになっています。

今回のティアラ定期ではシベリウスの交響曲第2番を演奏します。私が大好きな国民楽派の作曲家の中でも、特に愛着を持っているのがシベリウスです。ことに今回は交響曲第2番が演奏できるので、とても嬉しく思います。

東京シティ・フィルとは、ドイツ・ロマン派はもちろんのこと、古典派、さらにそれ以前のバロックなども取り上げ、長年かけて系統的に経験を積み重ねてきました。国民楽派のプログラムもその流れの上に乗っており、各国の歴史とお国柄を色濃く映すそれぞれの作曲家の色とりどりの個性を、幅広くしかも深く表現できるようになってきたように感じております。

シベリウスは、フィンランドの歴史、言語の特徴、人々のメンタリティ、そして北国の自然環境を音楽で生き生きと描いています。特にこの交響曲第2番は、北国の自然がこれほどありありと描かれている音楽も少ないのではないかと思うほどです。14日も、オーケストラがどのようにシベリウスの音を出してくれるか、非常に楽しみです。

リハーサル風景
リハーサル風景

プログラムの前半には、聴衆の皆様に大変愛されているメンデルスゾーンの2曲をお送りします。序曲「フィンガルの洞窟」の自然描写は、見事としかいいようがありません。おそらくヴィヴァルディの「四季」、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」の伝統を引き継いで、さらにロマン的表現を加味したメンデルスゾーンの自然描写の豊かさに、驚くばかりです。

「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」では、江東区出身の小野明子さんと久しぶりに共演できるので、嬉しく思います。小野さんももうヴェテランの域に入っており、期待しております。
この協奏曲は、メンデルスゾーンならではの古典的な様式とロマン派的な表現を見事に融合させ、しかもヴィルトゥオジティ(名人芸)の楽しみも合わせ持つ、不朽の名作です。ただし、あまりに頻繁に取り上げられるために、気をつけないと型通りの演奏に陥ってしまう恐れもあります。

今回は3曲とも非常に人気のある作品であるだけに、これを本当に皆様に堪能していいただけるように演奏するだけの力量が私たちに備わっているか、非常に身の引き締まる思いでおります。
開演前14時30分からは、東京シティ・フィルのメンバーによるプレ・コンサートもございます。ティアラこうとうで、皆様のお越しを心よりお待ちしております。

飯守泰次郎

 
 
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