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『ニーベルングの指環』という作品は、神話・伝説から題材を採っています。 神話・伝説といえば昔々の物語かと思えば、その内容は、『ラインの黄金』だけを見ても、自然破壊、愛のもつれ、夫婦げんか、憎しみ、欲望…まさに、今朝の新聞をにぎわせている様々な出来事そのものです。 その意味では、人間は昔から全く変わっていないのです。 このように、『指環』が扱っているのは、まったく私たちにとって耳が痛い、まさにアクチュアルなテーマなのです。 人間がこの世に存在するかぎり避けることのできない数々の問題を、150年前に見通して警告したワーグナーの洞察力には、驚くばかりです。
秋場所の戦績もよくご存じで、白鵬関のファンだそうです。 関取並みの立派な体格なので、衣裳を着る前の浴衣姿もよくお似合いです。 10月10日の公演終了後には、新国立劇場の個人賛助会員の方々をお招きしたパーティーがありました。 出演歌手も交えて、和やかな交流のひとときを持つことができました。 ヴォータンとローゲの衣裳や、アルベリヒの蛙と指環、ヴォータンの槍の実物が展示され、お客様に間近でご覧いただきました。
このパーティーの席上、エルダ役のクリスタ・マイヤー氏が、1970年代にバイロイトで助手をしていた頃の私を知っているというご友人に、引き合わせてくださいました。
四部作の序夜『ラインの黄金』は、あと10/14と10/17の2公演がございますので、ここから始まる新国立劇場の『指環』に、ぜひお越しください。 皆様のお越しをお待ちしております。 |
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飯守泰次郎 |
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先日のゲネプロには、名ソプラノのカラン・アームストロングさん(ゲッツ・フリードリヒ夫人)がご子息のヨハネスさんと一緒に駆けつけてくださいました。 彼女とはヨーロッパで何度もご一緒してきたので、私が指揮する『ラインの黄金』の響きを聴けること、しかも夫君のフリードリヒ氏の演出であるということを、大変喜んでくださいました。本当に久しぶりに再会できて、私も大変嬉しく思いました。
これまでのリハーサルの様子や各種のインタビューなどは、トップページでもご紹介してまいりましたとおり、新国立劇場のホームページで案内されておりますので、ぜひご覧ください。 新国立劇場オペラ芸術監督 飯守泰次郎 新国立劇場2015年8月報道発表資料より(提供:新国立劇場) 2017年に開場20周年を迎える新国立劇場は、この2015年秋から3年がかりで、オペラ史上最大のスケールを持つ超大作『ニーベルングの指環』を上演します。 新国立劇場オペラ芸術監督就任2シーズン目となり、私は、これまで全世界で蓄積されてきたワーグナー演奏と演出の歴史のすべてを結集して、『指環』の本質に最も迫る上演を実現することを決意いたしました。 そしてそれが実現できるのは、まさにここ新国立劇場である、と確信いたしております。いま世界で最も踏み込んだ『指環』体験をしていただくために、皆様に、ぜひ新国立劇場にいらしてくださるよう呼びかけたいと思います。 『ニーベルングの指環』には、ひとつの世界が生まれて終わるまでのすべてが描かれています。 いま私たちの生きる現実の世界は、人類と地球の存続に関わる数々の問題に直面し、この状態からの救済を求めて、あらゆる分野で必死の努力が続けられています。 ワーグナーがオペラの創作を通じて生涯追求し続けたのが、まさにこの“救済”というテーマです。 『指環』は、権力と愛、あるいは人間と自然の調和についての、ワーグナーからの巨大な問題提起です。 “最終的にこの世が救済されるためには何がなされなければならないのか”という問いに対して、答えはあるのでしょうか。 『指環』を上演するということは、まさにこの答えのない問いに、オペラの舞台を通して向き合うことにほかなりません。 ワーグナーの作品だけを集中して演奏してきた、比類のない歴史を持つバイロイト音楽祭の現場に、私は長年にわたって身を置いてまいりました。『指環』という作品にも生涯を通じて向かい合い、数多くの演出を体験しました。 故ゲッツ・フリードリヒ氏とは、私がまだ若い頃から一緒に仕事をする機会に恵まれました。 彼は、かつてないほど音楽と演出の両方を徹底的に深く掘り下げて、新しい演出のスタイルを確立し、晩年には音楽と演出が極端に矛盾することのない境地に達しました。 彼の生涯最後の『指環』の偉大なプロダクションを、いま東京で実現することに大きな意義がある、と私は考えています。
さらに、このたびの『指環』においては、主役級テノール4役―ローゲ、ジークムント、『ジークフリート』と『神々の黄昏』のジークフリートのすべてを、世界的なヘルデン・テノールであるステファン・グールドが歌うことに、おおいにご注目ください。 |
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飯守泰次郎 |
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