ブルックナー交響曲第9番第1楽章のリハーサル〜
写真:(C)高関健 |
飯守泰次郎です。 東京の暑さも厳しくなってまいりました。東京シティ・フィルとのブルックナー交響曲ツィクルスを締めくくる第9番のコンサート(7/5)に向けて、連日リハーサル中です。
このツィクルスは、私がシティ・フィルの桂冠名誉指揮者に就任した2012年から始まり、年に1曲ずつ、交響曲第4番、5番、7番、8番、と回を重ね、いよいよ今回、第9番を演奏いたします。コンサートの前半には、ブルックナーの「テ・デウム」を演奏いたします。
ブルックナーは、長く教会のオルガニストを務め、多くの宗教音楽を書いていましたが、40歳を超えて突如、交響曲を次々と書き始めました。それらはいずれも長大で、しかも晩年に向けて規模はますます巨大になっていきました。
ベートーヴェンの最後の交響曲が「第九」であったことから、ブルックナーは、自分は交響曲第9番を完成できるだろうか、と不安に苛まれながら、第3楽章まで書き上げました。そして第4楽章のスケッチのみを遺し、この作品は永遠に未完のままとなったのです。
深い信仰の中に一生を送ったブルックナーにとって、作曲するという行為は、おそらく神との対話そのものだったのだと思います。
後期ロマン派の当時の音楽はすでに、ワーグナーに代表されるように劇的な方向に進んでいました。しかし、ブルックナーの交響曲は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンからシューベルトへ、という古典的な純音楽の流れの到達点に位置しています。劇や文学と結びつく音楽ではない、純粋に抽象的な内面の音楽として交響曲を書いた最後の作曲家が、ブルックナーなのです。
写真:(C)高関健 |
ブルックナーは、第9番の第4楽章が完成できなかったときは代わりに「テ・デウム」を演奏するように、との言葉を遺したとされています。
安井陽子さん、増田弥生さん、福井敬さん、清水那由太さん、という、望みうる最高の独唱陣を迎え、私と東京シティ・フィルと長い共演を重ねて理解しあえる合唱団である東京シティ・フィル・コーアとともに、ブルックナー最高の宗教作品である「テ・デウム」を演奏できることを、幸せに思います。
1日目のリハーサルに、シティ・フィルの常任指揮者の高関健さんがいらして、愛用のカメラで私の写真を撮ってくださいました。高関さんは素晴らしい指揮者ですが、写真家としてもこのような素晴らしい腕前をお持ちであることは存じ上げませんでした。やはり指揮者が指揮者を撮っただけあって、音楽の流れが伝わってくる写真であることに驚いています。
明日は、ツィクルスを締めくくるにふさわしい大曲2曲のコンサートです。皆様のお越しを、東京オペラシティで心よりお待ちしております。 |