メッセージ:2016年10月〜12月  

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日本フィルハーモニー交響楽団第686回定期演奏会(2016/12/9・10)に向けて
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に向けて、連日リハーサル中です。

今回のコンサートの1曲目は、日フィルの委嘱による湯浅譲二氏の『始源への眼差III』で、2005年の初演を私が指揮してCDにも収録されている作品です。私は、これまでも湯浅作品を何曲も演奏していますが、この作品は特に演奏至難といえると思います。
リハーサルを重ねてこの作品に入り込んでみると、普通の人間の時間感覚とは違う、スケールの大きな宇宙的な時間の観念に圧倒されます。人類以前の、動物的な記憶…生き抜くための危機感や動物としてのコミュニティの感覚などが蘇るような気がしてきます。
西洋的なテーマや音程とは異なるアプローチで自然界そのものをオーケストラの音にすることで、バッハとも共通する普遍性に到達していると思います。湯浅氏は、美しい星がちりばめられた宇宙空間を埋める物質からエネルギーを得て作曲されたのではないか、とさえ思います。
宇宙の始まりを思わせる爆発的なエネルギーを、オーケストラでどのような色合いで表現するか、リハーサルを重ねています。

ブラームスの二重協奏曲のソリストは、日フィルのアシスタント・コンサートマスターの千葉清加さんとソロ・チェロの辻本玲さんという、日フィルの誇る大変優秀な若いお二人です。同じオーケストラのメンバーだけに、息の合ったアンサンブルをお楽しみいただけると思います。

プログラムの後半は、シューマンの交響曲第3番「ライン」です。変ホ長調という調性はベートーヴェンの「英雄」と同じでありながら、いわゆるドイツのシンフォニックな音楽とは違うところが、シューマン独特の難しさです。
彼は素晴らしい歌曲(リート)を数多く残し、また優れたピアニストでもありました。そのような彼個人のデリケートな心情が、交響曲であっても色濃く反映されているので、シューマンならではの表現をお伝えできればと思います。

同じプログラムで2公演ございます。皆様のお越しをサントリーホールでお待ちしています。

 
飯守泰次郎
 

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札幌交響楽団第595回定期演奏会(11/25、26)に向けて
−飯守泰次郎−

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リハーサル風景
リハーサル風景

飯守泰次郎です。 札幌交響楽団の定期演奏会に向けて、札幌で毎日リハーサル中です。私は満州で生まれたので、寒さが厳しいほうが元気になるたちで、冬の札幌に来ると心がはずみます。
今回は、コンサートの前半がベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、後半はワーグナーの『ニーベルングの指環』からオーケストラによる名場面をお楽しみいただくプログラムです。

ピアノ独奏のニコライ・ホジャイノフさんと共演するのは初めてですが、若々しい彼の音楽性に大変感動しております。彼はソリストとして、オーケストラ、指揮者と一緒に音楽を創っていくことを特に大切にする演奏家であり、演奏中にどんどん発展し変化していくことが感じられて、共演することに喜びをおぼえます。明日のゲネプロ、そして本番と、さらにどう変化していくのか非常に楽しみです。

Kitaraホールの舞台を埋めつくす巨大なオーケストラ
Kitaraホールの舞台を埋めつくす巨大なオーケストラ〜11/25公演より

札響とは、以前から数年ごとにたびたび共演しており、ワーグナーやベートーヴェンを中心に幅広いプログラムをご一緒してきました。特に今年は、ニューイヤーコンサートでも共演して数々のオペラの名曲を演奏したばかりです。 札幌に来るたびに、このオーケストラの成長ぶりにいつも驚かされています。それはやはり、札響の皆さんの音楽する心の素晴らしさなのです。
今回は特に、ふだん札響があまり演奏していないワーグナー後期の『指環』ですが、作品の内容に体当たりで取り組んでいる皆さんの意欲に、こちらも大変手ごたえを感じております。明日、お客様をお迎えする本番では、ますます熱の入った演奏になるに違いありません。

Kitaraホールは、響きも環境も雰囲気も実に美しい、素晴らしいホールです。今回はここで2日続けて演奏できるので、いっそう嬉しく思います。Kitaraホールで皆様をお待ちしております。

ピアノ独奏のニコライ・ホジャイノフさんと
ピアノ独奏のニコライ・ホジャイノフさんと
 
飯守泰次郎
 

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ミューザ川崎モーツァルト・マチネ第27回(2016/11/13)によせて
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。 11/13は、ミューザ川崎シンフォニーホールで「モーツァルト・マチネ」を指揮いたします。 このシリーズは、週末の朝をモーツァルトの音楽で始め、コンサートのあとの午後の時間も有意義にお過ごしいただけるように、というコンセプトで続けられているコンサートです。気軽にお越しいただける1時間程度のプログラムが組まれており、オーケストラは東京交響楽団です。

モーツァルトの交響曲第1番は、まだ10歳にも満たないときに作曲されていながら、主題の扱いも十分に成熟しており、ハーモニーの移り変わりがすでに後期の交響曲を予感させる、素晴らしい作品です。 モテット『踊れ、喜べ、幸いなる魂よ』は、実力と人気を兼ね備えたヴェテランのソプラノ、森麻季さんをお迎えします。 そして、交響曲第29番イ長調は、もはや説明の必要がないほど愛されている名曲です。

私はこの秋、巨大で重厚なワーグナーの音楽に長く集中しておりましたので、全く対照的なモーツァルトの音楽を演奏する喜びもひとしおです。
ミューザ川崎の響きを知り尽くしている東京交響楽団も、室内楽的な自発性をもって生き生きとしたモーツァルトを演奏してくれていますので、本番が大変楽しみです。 ミューザ川崎で皆様をお待ちしております。

 
飯守泰次郎

 

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群馬交響楽団第522回定期演奏会(2016/10/29)によせて

−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。 群馬交響楽団の定期演奏会(10/29)に向けて、毎日リハーサルを重ねております。

群馬交響楽団とは、もう非常に長いお付き合いです。群響練習場の指揮者の楽屋は大きな窓があり、高崎城址公園の緑が望めます。これまでも満開の桜の頃や、雪景色の頃にこの部屋に来たことを思い出しました。私の姉が群響でフルートを吹いていたこともあり、世代が入れ替わっても、私にとってやはり懐かしいオーケストラです。

今回の曲目は、ドヴォルジャークのチェロ協奏曲と、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」です。

ドヴォルジャークは、すでに何度もお伝えしているとおり、私が特別な愛着をもっている作曲家です。独奏はタチアナ・ヴァシリエヴァさんで、この華やかな協奏曲を自由自在に演奏する、非常に才能豊かなチェリストです。このような素晴らしいソリストを迎えることができて、オーケストラも私もいっそうやりがいを感じています。

「英雄」は、音楽史の流れを、極端にいえば創造的に破壊したとさえいえる作品です。冒頭の2つの和音による打撃は、まるでベートーヴェンが「ハイドン!モーツァルト!」と叫んでいるように私には聞こえてならないのです。この瞬間、ベートーヴェンが古典派の偉大な二人の先達を乗り越え、哲学的な内容を持った新しい交響曲の時代を切り拓いたのです。
私も指揮者として50年以上活動してきて、「英雄」を何回指揮したかとても数えきれませんが、それでも毎回新しい発見があることに驚きます。
この特別な交響曲を表現するには、オーケストラにも、単なる演奏にとどまらず非常に確固とした“意志”が求められるので、いきおいリハーサルも白熱します。

久し振りの群響との共演で、私も本番が大変楽しみです。群馬音楽センターは、高崎駅からも徒歩圏内です。皆様のお越しをお待ちしております。

 
飯守泰次郎

 

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新国立劇場『ワルキューレ』(2016/10/2・5・8・12・15・18)によせて

−飯守泰次郎−

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イレーヌ・テオリン氏(ブリュンヒルデ)、グリア・グリムスレイ氏(ヴォータン役)と
イレーヌ・テオリン氏(ブリュンヒルデ)、
グリア・グリムスレイ氏(ヴォータン役)と

飯守泰次郎です。 このMessageコーナーをご覧くださる皆様に、ごぶさたをしてしまい申し訳ありません。 新国立劇場2016/17シーズンの開幕公演『ワルキューレ』(全6公演)は、残すところあと2公演となりました。 リハーサルが始まった頃はまだ厳しい残暑でしたが、今は秋虫が盛んに鳴いていることに驚くばかりです。

今回のキャストの皆さんは全員「巨人族」です!

もちろん、この写真のイレーヌ・テオリン氏はブリュンヒルデ役、グリア・グリムスレイ氏はヴォータン役で、物語の中では神々族ですが、実際に彼らと並ぶとご覧のとおりです。

ジークムントのステファン・グールド氏とジークリンデのジョゼフィーネ・ウェーバー氏もまさにヘルデン・テノールとワーグナー・ソプラノというカップルですし、フンディングのアルベルト・ペーゼンドルファー氏はさらに見上げるような巨躯です。フリッカのエレナ・ツィトコーワ氏は、この中ではまだ「人間」サイズですが、迫力と存在感はやはり絶大です。

現在望みうる最高のワーグナー歌手が勢揃いしていることは、実際に舞台をご覧いただけば一目瞭然で、しかもこの6人のソリストの皆さんは人柄もそれぞれ素晴らしく、一緒に音楽をすることが楽しくて仕方のないような人たちです。私も、彼らと一緒に仕事ができることを、大変嬉しく思っています。

8人のワルキューレたちは、今回のキャストの中に入るとちょうど妹たちのように見えて、パワフルな少女騎士たちを生き生きと演じてくれています。
5時間を超える長丁場ですが、東京フィルハーモニー交響楽団も、素晴らしい演奏で協力してくれています。

これまでの4公演をお聴きくださったお客様からいただいた多くの熱いご感想も支えに、残る2公演に力を尽くしたいと思います。

この作品に寄せて新国立劇場『ワルキューレ』特設ページに寄せた文章はこちら(ページの下方)からお読みいただけます。新国立劇場『ニーベルングの指環』四部作の3年がかりの壮大な物語を、ぜひご一緒いたしましょう。新国立劇場のピットで、心よりお待ちしております。

 
飯守泰次郎

 
 
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