メッセージ:2017年10月〜12月  

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仙台フィルハーモニー管弦楽団
第314回定期演奏会(2017/11/17、18)によせて

−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。このホームページでのご報告が遅くなってしまいましたが、すでに先ごろ報道発表されております通り、2018年度より仙台フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任することになりました。私の常任指揮者就任と同時に、レジデント・コンダクターに高関健さん、指揮者に角田鋼亮さんが同時に就任されます。

仙台フィルとは、今月上旬も秋田県大仙市の音楽祭で一緒に演奏しました。 そして今週は、私も仙台に滞在しております。仙台はすでに真冬の寒さですが、私は満州生まれなので、寒いところのほうがむしろ元気です。

本日11/17と明日11/18は、第314回定期演奏会で、モーツァルトの「三大交響曲」、すなわち第39番変ホ長調、交響曲第40番ト短調、交響曲第41番ハ長調の3曲のみという、特別に美しいプログラムを指揮いたします。
今回は、演奏曲目とオーケストラの編成、そして定期演奏会場である日立システムズホール(客席数802)の響きを総合的に判断して、弦楽器の配置をいわゆる「対抗配置」で演奏いたします。
来年度に向けた新たな一歩として、私も仙台フィルともども張り切っております。皆様のお越しを、日立システムズホールで心よりお待ちしております!

 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場『神々の黄昏』を終えて(2017年10月)
−飯守泰次郎−

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『神々の黄昏』千秋楽終演直後の記念写真
新国立劇場『神々の黄昏』楽日終演後(2017年10月17日)〜私の左から、ぺトラ・ラング氏(ブリュンヒルデ)、ステファン・グールド氏(ジークフリート)、アルベルト・ペーゼンドルファー氏(ハーゲン)、安藤赴美子氏(グートルーネ)、一人おいて島村武男氏(アルベリヒ)、三澤洋史氏(合唱指揮)、私の右方にノルン3姉妹、最前列にラインの乙女とその右隣に読響コンマスの小森谷巧氏、そして音楽スタッフ、助演の俳優の方々ほか支えてくださった方々と共に
 


飯守泰次郎です。 ついに、新国立劇場2014年〜2017年のワーグナー『ニーベルングの指環』が完結しました。四部作の各作品6公演で全24公演をすべて終えることができました。応援してくださった皆様、支えてくださったすべての皆様に、改めて心から御礼を申し上げます。

上記の写真は、10/17千秋楽終演直後の舞台裏で、喜びの乾杯に集まった出演者の皆さん(グンター役のアントン・ケレミチェフ氏だけがお着替えで写っていないのが残念ですが!)、そして、この気が遠くなるような仕事に取り組み続けて支え続けてくださった、どんなに感謝しても感謝しきれない方々です。

ペトラ・ラング氏(ブリュンヒルデ)と
ペトラ・ラング氏(ブリュンヒルデ)と

上演時間約6時間に及ぶ『神々の黄昏』を、ほぼ中2日で6回、という公演日程は、世界的にもなかなかないハードスケジュールでしたが、歌手もオーケストラも合唱団も、私を含めた出演者が無事完走することができました。ソリストに世界最高のワーグナー歌手陣を迎え、また『指環』で初めて合唱団も登場し、客席も毎回非常に沸き立ちました。

特に、ステファン・グールド氏が『指環』四部作すべての主要テノールを歌って全公演にフル出場を遂げたことは、往年のヴォルフガング・ヴィントガッセンやジークフリート・イェルザレムにも匹敵する、歴史的にもめったにない偉業です。しかも4役とも見事な歌唱で、何といっても声が素晴らしく、毎回まさに最高の声で聴衆を魅了し尽くしたことは、この偉業の芸術的な価値をいっそう高めたと思います。

初めて新国立劇場のピットに入った読売日本交響楽団も、ワーグナー後期の重厚な管弦楽を、持ち前の大変充実した響きと安定した積極的なアンサンブルを活かして、存分に表現してくれました。

ワルトラウト・マイヤー氏(ワルトラウテ役)と
ワルトラウト・マイヤー氏(ワルトラウテ役)と

上演時間6時間というと、演奏する側だけでなく聴く側も相当な覚悟を必要とすると思いますが、毎回客席もほぼ満員で、熱い声援に大変励まされました。さらに、全曲の最後の和音が消えたあとの魔法のような長い静寂も、決して忘れ得ぬ素晴らしい経験となりました。
新国立劇場で「劇場の温度を上げたい」、つまり舞台と客席が一体となってもっともっと熱気溢れる劇場にしたい、という、芸術監督として私が目指していることが実現できていることも大変うれしく思い、残る任期もさらに力を尽くしたいと思います。

新国立劇場オペラの次の公演は、私がオペラの道を志すきっかけとなった『椿姫』です(指揮:リッカルド・フリッツァ氏、演出:ヴァンサン・ブサール氏。11/16・19・23・25・28)。ステファン・グールド氏と私は、来年の新制作『フィデリオ』(2018/5/20・24・27・30・6/2)に出演いたします。新国立劇場へ、皆さまのお越しを心からお待ちしています。

 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場2017/2018シーズン『フィデリオ』(新制作)
制作発表記者会見(2017/10/12)によせて
−飯守泰次郎−

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左からダニエル・ウェーバー氏(ドラマツルグ)、カタリーナ・ワーグナー氏、ステファン・グールド氏(フロレスタン役)、私
左からダニエル・ウェーバー氏(ドラマツルグ)、カタリーナ・ワーグナー氏、ステファン・グールド氏(フロレスタン役)、私

飯守泰次郎です。新国立劇場2017/18シーズン開幕公演『神々の黄昏』も、残すところ10/14(土)と10/17(火)の2公演のみとなりました。
一昨年の今頃から始まった新国立劇場の『ニーベルングの指環』の物語も、いよいよ大詰めを迎えています。上演時間計約6時間という大変な長時間の公演にもかかわらず、毎回非常に多くのお客様がいらしてくださり、その熱気に励まされております。千穐楽10/17はまだ多少残席があるようです。オペラパレスへのお越しを心よりお待ちしております。

先日、『神々の黄昏』4回目の公演翌日の10/12に、来年5月プルミエの『フィデリオ』(2018/5/20・24・27・30・6/2)の制作発表記者会見を行いました。

演出を依頼しているカタリーナ・ワーグナー氏、ドラマツルグのダニエル・ウェーバー氏、そして前日も上演時間6時間の長丁場でジークフリート役を大変見事に歌ったばかりの、フロレスタン役 ステファン・グールド氏と、私が登壇いたしました。

会見中に私からお話しした内容の要旨を、ホームページをご覧の皆様にもお読みいただけるように以下に掲載いたします。『フィデリオ』は、私が新国立劇場のオペラ芸術監督として指揮する最後のプロダクションです。どうぞご期待ください。

***

新国立劇場『フィデリオ』制作発表記者会見(2017/10/13)でのご説明要旨:

2017、18シーズンの3本目の新制作『フィデリオ』は、開場20周年記念特別公演として上演いたします。
『フィデリオ』と聞いただけで私は身が引き締まります。ベートーヴェンの唯一のオペラであり、彼の理想主義と、最も深い哲学が表現され、人の心に深い感動をもたらす、特別な作品です。欧米では、大きな節目や重要な記念日を祝うために取り上げられる伝統があります。新国立劇場開場20周年に最もふさわしい作品、といえると思います。

『フィデリオ』の内容は、理想的な気高い夫婦愛です。これは一番オペラになりにくい題材でしょう。身を焦がすような恋も、浮気も裏切りも出てこないので、刺激が足りない・・・といわれることもありますが、もちろんこの作品はそういう俗世をはるかに超越しているのです。
ベートーヴェンが生涯をかけて追い求めた、自由、平等、博愛、という、民主主義の土台となる精神が、凝縮されています。そして、ベートーヴェンからウェーバー、ワーグナーと発展していくドイツ・オペラの原点となった、重要な作品です。

今回の『フィデリオ』は、演出家のカタリーナ・ワーグナーさんに演出をお願い致しました。
カタリーナさんは、バイロイト音楽祭の総監督を務めておられて、リヒャルト・ワーグナーの ひ孫にあたります。ドイツ各地の歌劇場で、ワーグナーを始めとするさまざまなオペラを演出しておられますが、最近では特に2015年のバイロイト音楽祭の『トリスタンとイゾルデ』で、高い評価を集めています。世界のオペラの次世代をリードしていく、特別な立場にある演出家です。
ベートーヴェンの音楽は、今でこそ「古典」といわれていますが、作曲当時は大変センセーショナルで革命的だったのです。今回、新国立劇場から世界に発信する『フィデリオ』にふさわしい、カタリーナさんならではの新鮮な舞台を期待しております。

このプロダクションは新国立劇場20年の歴史を象徴する、特別な魅力を持っています。
というのは、カタリーナさんは、新国立劇場オペラでおそらく初めて、親子2世代にわたって登場される方だということです。1997年に、新国立劇場のこけら落とし公演『ローエングリン』を演出したのが、カタリーナさんの父親のヴォルフガング・ワーグナーさんでした。娘であるカタリーナさんが今回、20周年記念の『フィデリオ』を演出してくださることに、不思議なご縁を感じております。

キャストについてご説明します。

『フィデリオ』は、私が新国立劇場の芸術監督として指揮する最後の作品となります。ベートーヴェンは、ワーグナーと並んで、指揮者として私が最も深く掘り下げてきた作曲家です。任期の締めくくりとしてベートーヴェン唯一のオペラに取り組めることを、大変嬉しく思います。オーケストラは、東京交響楽団です。

ベートーヴェンは、交響曲やピアノ曲、弦楽四重奏曲と同じように、オペラでも、「より深く、より高貴な人間像」という理念を追求しました。そして、声や楽器の事情に配慮するよりも、理念が常に先に立つ人でした。
『フィデリオ』も、声楽的オペラというよりは、むしろ器楽的で、歌手にも高度な技術が要求されます。それだけでなく、気品とパワーも持ち合わせていなければなりません。ある意味、ワーグナーを歌うよりも難しいといえます。

フロレスタンのステファン・グールド氏は、『ニーベルングの指環』のヘルデンテノール4役を歌ってくださっていて、もう説明の必要もないでしょう。望み得る最高のフロレスタンです。

レオノーレはリカルダ・メルベート氏で、この役に求められる徹底的な技術を持っている、まさにレオノーレ歌いです。今回もウィーンでレオノーレ役を歌った後、新国に駆け付けてくださいます。

ロッコは妻屋秀和氏で、声も演技も、国際的にもトップクラスの歌手です。

ドン・ピツァロはミヒャエル・クプファー=ラデツキー氏です。世界の歌劇場で、ドイツ・オペラの主要なレパートリーで引っ張りだこの歌手です。

ドン・フェルナンドは黒田博さんで、舞台に素晴らしい緊張感を作り出すヴェテランです。フィナーレを立派に飾ってくれることと思います。

自由と解放を求める囚人のコーラスも、ほかに類を見ないくらい感動的な響きで、大きな聴きどころです。世界的にも評価されている新国立劇場合唱団の力が、存分に発揮されることでしょう。

 

飯守泰次郎

 
 
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