メッセージ:2019年10月〜12月  

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「音楽の友」誌〜
“ベートーヴェン的な、あまりにベートーヴェン的な”取材
−飯守泰次郎−

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越懸澤麻衣さんのインタビューを受ける

飯守泰次郎です。来年生誕250年を迎えるベートーヴェンと作品の魅力について、というテーマで、「音楽の友」誌のインタビューを受けました。
インタビュアーは越懸澤麻衣さんです。

ベートーヴェンとの「出会い」から始まって、ベートーヴェンを演奏するにあたって特に意識していること、「お気に入りの1曲」など、とても一言ではお答えしきれない難しい問いばかりでしたが、私にとってワーグナーと並んで最も深く掘り下げてきたのがベートーヴェンであり、改めて彼の人物と作品について考える良い機会となりました。

このインタビュー記事は、来年2/17発売の2020年3月号に掲載予定とのことです。ぜひご覧ください。

 

飯守泰次郎

 

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「エンター・ザ・ミュージック」(BSテレ東・12/21夜放映)に出演します
−飯守泰次郎−

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藤岡幸夫さん、角谷暁子アナウンサーと
藤岡幸夫さん、角谷暁子アナウンサーと

飯守泰次郎です。12/21(土)夜23:30放映のBSテレビ東京の番組「エンター・ザ・ミュージック」にゲスト出演致します。

今回は、私が関西フィルと演奏した昨年の田辺第九公演(2018/12/9)より第九の第4楽章を放映いたします。
司会の藤岡幸夫さん、角谷暁子アナウンサーと3人のトークも、和やかな雰囲気の中で大いに盛り上がりました。年末ならではの第九をぜひご覧ください!

 

飯守泰次郎

 

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秋山和慶くんと一緒にコンサート出演
−飯守泰次郎−

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秋山和慶くんと
秋山和慶くんと

飯守泰次郎です。秋山和慶くんは、桐朋での同級生(というか悪友)です。 指揮者はお互いとにかく忙しいので普段はなかなか会う機会がないのですが、 先週私が出席した関西フィルの創立50周年記者会見に引き続いて行われた「大阪四大オーケストラ」の記者会見に秋山君が出席して大変久し振りに会うことができました。

さらに今日12/1は「音楽大学オーケストラ・フェスティバル2019」(ミューザ川崎シンフォニーホール)で、私が武蔵野音楽大学を、彼が洗足学園音楽大学を指揮したので、何と一緒にコンサートに出演出来、本当に嬉しかったです。

桐朋時代は、齋藤秀雄先生の下で一緒に勉強し、一緒に色々と悪さもしたものです。何か悪さをしても、秋山くんはいつも逃げ足がはやく、捕まるのはいつも私でした。 今日も、舞台裏で、学生時代の話に花が咲きました。

学生時代の写真と今日の写真〜before after?
"before after" ?
 


飯守泰次郎

 

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関西フィルハーモニー管弦楽団 創立50周年 記者発表会
〜『リング』ハイライト(2020/5/30) および
「ブルックナー0+00番」(2020/10/29)に向けて〜
−飯守泰次郎−

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多くのお客様がお越しくださいました
関西フィル指揮者陣3人が揃って

飯守泰次郎です。本日11/26は、来年の関西フィルハーモニー管弦楽団創立50周年に向けた記者発表会を行いました。

現在の関西フィル音楽監督のオーギュスタン・デュメイさんと首席指揮者の藤岡幸夫さん、そして桂冠名誉指揮者の私、という指揮者陣3名が一堂に会し、創立50周年の各公演についてご説明をいたしました。

私はまず、初めて関西フィルを指揮した1990年にさかのぼり、創立50年の歴史のうちの30年を共に歩んだ成果として、常任指揮者就任の時期に2000年から2年がかりで完結した“ベートーヴェン全交響曲・協奏曲・序曲ツィクルス”、 2011年から取り組んでいる「ブルックナー全交響曲ツィクルス」、そして常任指揮者以前から継続中の「演奏会形式によるオペラ上演シリーズ」の成果についてお話しいたしました。 そして、これらの歴史をふまえて今ブルックナーのツィクルスを積み重ねていることが、ワーグナーの響き、表現を追求する上でも大変素晴らしい影響を与えていること、関西フィルが立派なワーグナー・オーケストラに成長していること等をお伝えいたしました。

聴きどころを弾き語りでレクチャー
藤岡幸夫さん、オーギュスタン・デュメイさんと

そのうえで、2020年5月30日に開催する特別演奏会・大阪国際フェスティバル第58回公演「『ニーベルングの指環』ハイライト」(詳細はこちら)についてご説明いたしました。 まさに創立50周年にふさわしい壮大なコンサートで、関西フィルと私の長年の積み重ねを結集した公演であり、 『リング』のハイライトで演奏時間が3時間におよぶコンサートは滅多になく、まるで『リング』全体を聴いたような特別なコンサートになるに違いない、と申し上げました。 特に、ソプラノのペトラ・ラングを始めとした世界のトップ・ワーグナー歌手の素晴らしい歌唱を大阪で存分に堪能していただきたいと思っております。

続いて、2020年10月29日の第314回定期演奏会「ブルックナー・ツィクルス最終回〜0+00番」についてお話ししました。 これは「2020年」「関西フィル50周年」「ブルックナー・ツィクルス第10回」「ブルックナー0番+00番」「飯守80才」で0が8つ!という、世界的にもめったにないゼロ尽くしのコンサートです!演奏機会の稀な2曲を一緒に聴ける、大変貴重なコンサートになるのは間違いありません。

関西フィル創立50周年は次の新しい歴史の「始まり」である、と私は考えています。これからも関西フィルにどうぞご期待ください!

 

飯守泰次郎

 

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セントラル愛知交響楽団 第172回定期演奏会
〜愛する祖国へ向けて〜(2019/11/22)によせて
−飯守泰次郎−

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堂々たるシベリウスを演奏してくださったタミ・ポヒョラさんと
堂々たるシベリウスを演奏してくださった
タミ・ポヒョラさんと

飯守泰次郎です。11/22は名古屋のしらかわホールで、セントラル愛知交響楽団の定期演奏会を指揮いたします。 今回はシベリウス・プログラムで、「フィンランディア」、ヴァイオリン協奏曲ニ短調、そして交響曲第1番ホ短調を演奏いたします。ヴァイオリン協奏曲のソリストは、フィンランドの若く優秀なヴァイオリニスト、タミ・ポヒョラさんです。

私は民族楽派の作曲家に非常に魅力を感じるのですが、その中でもシベリウスは特に愛着を持っており、日頃からもっと演奏したいと願っているので、今回のプログラムを大変楽しみにしていました。特に交響曲第1番は、最初の交響曲でありながらシベリウスらしく雄大で、彼の個性がすでに溢れ出ている曲です。

セントラル愛知交響楽団との共演は久し振りになりますが、若いオーケストラで、皆さん大変ひたむきに一心にシベリウスの音楽に集中してくださっています。フィンランドの自然のスケールの大きさや、フィンランドの人々の、北国の暗さや寒さを追い払うかのような熱狂的なエネルギーをはじめ、シベリウスの魅力を思う存分に味わっていただけるコンサートになると思います。皆様のお越しをお待ちしております。
 

飯守泰次郎

 

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日本センチュリー交響楽団第240回定期演奏会(2019/11/14)によせて
−飯守泰次郎−

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ユッセン兄弟と
絶妙に息の合ったルーカスさん(左・兄)と
アルトゥールさん(右・弟)のユッセン兄弟と共に

飯守泰次郎です。11/14は日本センチュリー交響楽団の定期演奏会を指揮いたします。曲目は、 ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲に続いて、モーツァルトの「3台のピアノのための協奏曲」ヘ長調 K.242を2台ピアノ版で、ルーカス・ユッセンさんとアルトゥール・ユッセンさんの兄弟デュオをお迎えして演奏します。 今年はR.シュトラウス没後70年にあたり、大阪の4つのオーケストラが連携してそれぞれ彼の作品をとりあげているとのことで、私たちは楽劇「ばらの騎士」組曲を演奏します。 さらに「ばらの騎士」の前に、ワーグナーの「リエンツィ」序曲、「ローエングリン」第1幕への前奏曲を組み合わせてお届けします。 先日から大阪で連日リハーサルを重ね、若さに溢れる日本センチュリー交響楽団の皆さんが、この盛り沢山のプログラムに非常に一生懸命に取り組んでくださっていますので、ぜひザ・シンフォニーホールにいらしてください。 バラエティ豊かなコンサートをお楽しみいただけると思います。皆様のお越しをお待ちしております。
 

飯守泰次郎

 

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仙台フィルハーモニー管弦楽団
第331回定期演奏会 第1夜(2019/10/25)の本番を終えて

−飯守泰次郎−

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細川俊夫さんと
”オーケストラのための「開花II」”のリハーサルを終えて、
細川俊夫さんと

本日は大雨の中、コンサートにいらしてくださった皆様、本当にありがとうございました。まだご帰宅途中の方々もいらっしゃるかと思います。どうかくれぐれもお気を付けて、ご無事を祈っております。

度重なる台風と豪雨等で今回の定期演奏会にご来場がかなわない方々にも思いを寄せながら、音楽を通じて皆様と勇気を分かち合いたいと思います。
明日の仙台のお天気は回復する見込みとのことで、どうか皆様のお越しを心からお待ちしております。

 

飯守泰次郎

 

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仙台フィルハーモニー管弦楽団
第331回定期演奏会(2019/10/25,26)によせて(下)

−飯守泰次郎−

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〔(上)から続く〕

◆ブルックナーの交響曲の特徴

ブルックナーの交響曲は、00番と呼ばれる習作から、未完成に終わった第9番まで、全11曲あります。それらの作品には共通したいくつかの特徴があります。こうした特徴は、彼が教会の名オルガニストであったことと深く関わっていると思います。

「ブルックナー開始」:
全曲の冒頭が、ごく弱音の弦楽器によるトレモロで始まることが多く、これは「原始霧」とも呼ばれます。交響曲第4番「ロマンティック」もブルックナー開始で始まりますので、最初は特に耳を澄ましていただければと思います。おそらくブルックナーの心の中には巨大なカテドラル(教会堂)があり、その巨大な空間をppの弦楽器のトレモロの響きで満たして、テーマの出現を準備する、という彼独特の着想だと私は思っています。

「ブルックナー・ユニゾン」:
オーケストラの全奏によるユニゾン(すべての楽器で同じ音を演奏すること)がしばしばあります。カテドラルいっぱいに響くオルガンの音をオーケストラで実現しようとするとこうなる、ともいえるかもしれません。

「ブルックナー休止」:
大音量で演奏していたオーケストラが突然止まり、しばらく長い休止が続きます。オルガンを弾き切ったあと、カテドラルにこだまする残響が消えて静かになるまでの時間を思わせる、特徴的な休止です。

「ブルックナー・クレッシェンド」:
ブルックナーでは、長いクレッシェンドに伴って、だんだんテンポを速くすることがしばしば求められます。通常の交響曲ならば基本的には一定のテンポで演奏されます。しかしブルックナーの場合はテンポの設定がかなり自由に揺れ動きます。これは、彼が自分一人でオルガンを即興的に弾いている感覚で作曲しているからではないか、と思います。

「聖なる野人」:
ブルックナーの交響曲のスケルツォ楽章は、しばしば「聖なる野人」という例えで愛されています。若い頃は修道院で農作業にも従事し、大食漢で、晩年になっても若い小娘に夢中になるような、人間ブルックナーの別の面がスケルツォには強烈に出ています。生き生きとした民族的な踊りや狩りの情景など親しみやすい音楽で、他の楽章とはっきりしたコントラストをなしているのもブルックナーの大きな魅力なのです。

◆巨大な響きの宇宙に身を任せて

今回演奏する第4番「ロマンティック」は、ブルックナーの交響曲の中では比較的コンパクトで(70分程度)演奏機会も多く、ブルックナー・ファン以外の方にも人気のある名曲です。
ブルックナーと組み合わせることのできる作品は限られるのですが、今回は私の大好きな細川俊夫さんの”オーケストラのための「開花II」”を演奏できることも大変嬉しく思っております。細川さんの音楽は、いわゆる現代音楽を超えた普遍的な内容を持っており、日本の自然観に立脚して静謐さと恐ろしいほど劇的なエネルギーが見事に表現されています。仙台フィルの誇る高い機能性と幅広い音色のパレットをお楽しみいただける作品、と思い選曲いたしました。

ブルックナーの交響曲を仙台フィルのお客様にお聴きいただくにあたって、なんらかの手がかりにしていただけるならば、と思ったことをお伝えしてまいりました。 ブルックナーの交響曲は、人間的な感情を超えた宇宙的な世界、精神性の世界、いわば「祈り」の世界を表現しており、だからこそ長くスケールも大きい、といえます。

オーケストラという巨大な楽器が奏でる音楽の中には、極端に言えば、この世が創造されて以来のすべての宇宙、自然、人類の歴史が含まれている、と常々私は思っております。このオーケストラの魅力を最大限に堪能いただけるのが、ブルックナーの交響曲なのです。
どうか、ぜひ演奏会にお越しください。そして、私がお伝えしたようなことは演奏が始まったらすべて忘れて、ただただブルックナーの音楽から生まれる巨大な響きの宇宙に身を任せていただければ、と思います。皆様の御来場を心よりお待ち申し上げております。

 

飯守泰次郎

 

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仙台フィルハーモニー管弦楽団
第331回定期演奏会(2019/10/25,26)によせて(上)

−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。明日10/25と明後日10/26は、仙台フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会です。ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を、細川俊夫さんの「開花II」と組み合わせたプログラムでお送りいたします。
この演奏会に寄せる私の思いは、先日トップページでもお知らせいたしました仙台フィルのホームページへの寄稿文に凝縮してお伝えしております。私のこのホームページをご覧くださる方にもすぐお読みいただけるように、(上)(下)の2回に分けて順次掲載いたします。長い文章になりますが、ぜひお読みいただければと思います。

*** 仙台フィルハーモニー管弦楽団ホームページへの寄稿記事

「仙台フィル2019年10月定期に寄せて(上) 〜飯守泰次郎(指揮)」

仙台フィルを応援してくださる皆様、オーケストラがお好きな皆様、音楽を愛するすべての皆様、こんにちは!飯守泰次郎です。
仙台フィルの常任指揮者に就任して、早くも1年半が過ぎました。若々しいパワーと好奇心に溢れ、結束して音楽に心身を投じる仙台フィルとご一緒でき、私も毎回新鮮な刺激と特別な喜びを与えられております。

常任指揮者に就任して以来、ベートーヴェンを柱とするプログラムに継続的に取り組んでいます。クラシック音楽で最も大切なことはやはり、作曲家の意思を聴衆の皆様にお伝えすることです。200年経ってますます輝きを増すベートーヴェンの音楽の価値を、21世紀のここ仙台ならではの取り組みで新たに掘り下げたい、と考え、年間のプログラム全体を見渡して毎回の曲目を組み立てております。

きたる第331回定期演奏会(10/25,26)は、いよいよブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を演奏いたします。

◆純粋音楽としての交響曲を書いた最後の作曲家・ブルックナー

西洋音楽における交響曲の歴史は、ハイドン、モーツァルトによって古典的な形式が確立されました。そしてベートーヴェンは、古典的な形式から出発し、交響曲第3番「英雄」(昨年6月定期で演奏)以降一気に発展して、後のロマン派、そして劇音楽にもつながる内容を持つようになります。

続くシューベルト、シューマン、ブラームスといった作曲家たちは、ベートーヴェンの交響曲という不倒の高みを乗り越えるために非常に苦しみ、その苦悩は非常に素晴らしいドイツ・ロマン派の交響曲群として実を結びました。今年の2月定期では、こうした交響曲の歴史における最高の頂点の一つであるシューベルトの「ザ・グレート」をお聴きいただきました。

19世紀後半の後期ロマン派以降は、ワーグナー、マーラー、リヒャルト・シュトラウス等、劇的な音楽や文学的な標題にもとづく音楽が主流となっていきます。そのような時代の中で、ハイドン、モーツァルトからシューベルトと続いてきた純粋音楽(ドラマや標題によらず、ただ音楽それのみで成り立つ音楽)としての交響曲を書いた最後の作曲家が、ブルックナーなのです。

◆ブルックナーの人柄と作風

オーストリアの寒村で生まれ、修道院の聖歌隊員であったブルックナーは、生涯を通じて非常に敬虔なカトリック信者でした。やがて教会のオルガニストとなり、特に即興演奏の名手として知られるようになります。

宗教的な合唱曲、ミサ曲などを作曲していた彼は、ウィーンの音楽院で作曲科の教授になった後、40歳を過ぎてから突然、巨大な交響曲を次々と書き始めます。
ブルックナーの交響曲というと、まず「長い」というイメージをお持ちの方は多いと思います。たしかに1時間を超える大掛かりな作品がほとんどで、オーケストラの編成も大きく、それまでの交響曲の規模をはるかに超えています。

一方でブルックナーは、周囲に意見されると曲をすぐ改訂してしまう弱気なところがありました。「長すぎる」と言われて「はい」と改訂するけれども、次の作品はさらに長くなっている…というまことに不思議な作曲家なのです。

そもそも作曲家というと、モーツァルト、ブラームス、リスト、ショパン、あるいはワーグナー…いずれも相応の洗練された服装や整えられた髪形の肖像画で、深い内面性や強い意志が伝わってくる表情で描かれています。
しかし、ブルックナーは無造作で凡庸な坊主頭、修道僧のような質素な服装というだけでなく、そもそも身なりに無関心で、しばしば右足と左足に違う靴を履いていて気づかなかったと言われています。数字に異様にこだわり、作曲家として高名になってからも、水玉模様の服を着た貴婦人を見ると駆け寄って水玉の数を数え始めるなど、洗練された振舞とは程遠い奇妙な性癖がいくつもあり、周囲や弟子たちを悩ませました。

作曲家らしくない、世間や時代から遊離した変った人柄と、巨大で深遠な彼の交響曲は、一見するとまったく結びつきません。しかしこの想像を絶するギャップにこそ、音楽の神秘、創造活動の偉大さがあるように私には思われるのです。

◆ワーグナーとブルックナー

ブルックナーの交響曲の内容を特徴づけるのは、その純粋さと宗教性です。
彼は、同時代の劇音楽の巨匠であるワーグナーを深く尊敬し、強い影響を受けました。ブルックナーの楽器の使い方や、和音と調性の扱いなど、いわば音楽の作り方は、ワーグナーから多くを学んでおり、ハッとするほど響きの共通性があります。それでいて、音楽の内容は劇音楽と純粋音楽、と全く対照的なのです。

たとえばワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』は、転調と半音を多用して、調性が人間の感情に与える作用を最大限に使いこなして男女の内面的なドラマを究極的に表現しました。
一方、ブルックナーの交響曲の緩徐楽章(アダージョなどのゆっくりした楽章)も、同様に転調や半音が多用され、深い宗教性とともに後期ロマン派的な官能性が感じられます。しかしブルックナーの表現は人間のスケールをはるかに超えており、ロマン派的というよりいわばゴチック的に、純粋に音楽による宇宙の表現に到達している、といえます。 彼にとって作曲という行為は神と自分の対話に他ならず、おそらく世の中のことは全く考えずに、ひたすらに自分の内的な欲求のみに従って作曲していたのでしょう。

〔(下)に続く〕

 

飯守泰次郎

 

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フレッシュ名曲コンサート/
オーケストラ with バレエ“アルルの女” (2019/10/6) によせて

−飯守泰次郎−

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「1812年」のリハーサル
「1812年」のリハーサル

飯守泰次郎です。10/6はティアラこうとうで「フレッシュ名曲コンサート/オーケストラ with バレエ“アルルの女”」を指揮いたします。

ティアラこうとうで毎年10月恒例のこの公演は、「フレッシュ名曲コンサート」と題して「身近なホールでオーケストラを楽しむ」「次代を担う音楽家を支援する」「名曲を気軽に楽しむ」という目的で、東京都歴史文化財団(東京文化会館)が各地域の団体との共催で開催しているシリーズです。

まず第1部として、チャイコフスキーの名曲をお送りします。序曲「1812年」、そしてまさにフレッシュなピアニスト西村翔太郎さんをお迎えしてピアノ協奏曲第1番変ロ短調を演奏いたします。

第2部は、すでに約20年近く続いているティアラこうとうのオリジナルで人気の「オーケストラ with バレエ」のシリーズとなります。共にティアラこうとうを拠点とする、東京シティ・フィルと東京シティ・バレエ団が共演し、ビゼーの「アルルの女」第1組曲、第2組曲を、石井清子先生の演出、振付で上演いたします。私にとってもバレエ団と共演できる機会は少ないので、とても楽しみにしているコンサートなのです。ぜひ、皆様のお越しをお待ちしています。

 

飯守泰次郎

 
 
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