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序曲の冒頭から、音楽が瑞々しく躍動している。惨忍な刑務所長ドン・ピツァロが登場する際の行進曲のリズムの重々しい不気味さや、第2幕冒頭のフロレスタンのアリア後半における「憧れのリズム」の波打つ高揚、それに続くレオノーレとロッコの対話の背景に流れる音楽の暗鬱な響きなど、平凡な指揮者なら無味乾燥に陥りやすいこれらの個所での飯守の音楽づくりは、まさに妙味と言っていい。決して力むことのない演奏ながら、アクセントは強く、ベートーヴェンの音楽特有のメリハリを充分に再現している。これだけ情感の豊かな音楽を聴かせる指揮者は、こんにちでは稀であろう。 関西フィルも(ホルンの頼りなさを除けば)、この指揮によく応えており、好演であった。 看守長ロッコを歌った橘茂は、この役にしては声が軽い(その点、22日の木川田澄は適役だろう)が、表現力においては優れたものを聴かせていた。 レオノーレの小西潤子とドン・ピツァロの花月真は、精一杯という感じだろう。ドン・フェルナンドの菊田隼平は低音が弱く、「正義の大臣」役としては存在感に欠ける。脇役だが、松原友(ヤキーノ)と高嶋優羽(マルツェリーネ)が、それぞれ役に合った良い表現を聴かせていた。 |
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−8月11日、ミューザ川崎シンフォニーホール
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